陽気なイエスタデイ

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2009年 01月 11日

超短編小説 『運命』

その日、オレは上司にこっぴどく叱られ、
すっかり気を落とし、ぼんやりと横断歩道を渡っていた。
突然、左折してきたダンプに気づいた。
-あぁ!轢かれるぅ!!!-
そう思った瞬間、後ろから駆けつけてきた男?に突き飛ばされた。
「バッカやろうぉ!なにをボケーっと歩いてんだぁ!!!」
急ブレーキをかけた運ちゃんにどやされ、
起き上がったときにはあの男?の姿はなかった。
-確かに男だったような‥‥?-

それからしばらくして友人たちと海水浴へ行った。
泳ぎの得意なオレは、みんなと離れ、少しばかり沖で
泳いでいたとき、足が痙攣しておぼれた。
-ブクッ ブクッ ブクブクブク‥‥-
もがき苦しみながら沈んでゆく。
海中から一人の男が浮かび上がってくるのが見えた。
誰かがオレを助けてくれた。
薄れてゆく意識のなかで、その男の顔をはっきり見た。
波打ち際に打ち上げられ、意識が回復したときには、
心配した友人たちに囲まれていたが、すでにあの男の姿はなかった。

そしてまたしても事件は起きた。
会社の同僚らと仕事の打ち上げで居酒屋で飲んでいたときだ。
「火事だぁ!火事だぁ!!!」
その声に気づいたときには、辺りはすでに真っ黒な煙と
燃え盛る火の海で、同僚たちを確認できないなか、
消防士ではなく、またしてもあの男が助けにきた。

人でごった返す通りに出て、消防車の放水と燃え上がる
雑居ビルを眺めながら、無言で立ち去ろうとしている男に
オレは尋ねた。
「どうして、私の危機に現れて助けてくれるんですか?」
男は振り向きもせず小声で言い放った。
「困るんですよねぇ‥‥!
 貴方は飛行機事故で亡くなることになっているんですから‥‥。」

by don-viajero | 2009-01-11 09:01 | 超短編小説 | Comments(2)
Commented by riojiji at 2009-01-16 23:51 x
「星三つ~~~」と行きたいとこですが・・・
新年だからと言って 甘くはあいません!「星二つ」どえす。

いや 最後の「困るんですよねぇ・・・」で 星三つに傾きかけたんですがねぇ。
Commented by DON VIAJERO at 2009-01-17 10:53 x
先に書いた「分かれ道」やこの「運命」は重松清の「流星ワゴン」から
ヒントをもらいました。

人間、一度や二度ばかりでなく
-あの時に戻って・・・-と
思うことはしばしばありますよね!

戻ったところで「バック・ツー・ザ・フューチャー」のような
わけにはいくわけがない。
やっぱり、運命みたいなものに縛られているのかな?
でも、少なくともその運命の半分以上は自己責任かも?


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