陽気なイエスタデイ

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2009年 02月 21日

超短編パロディ小説 『わが落胆の記』

僕は、僕の母の胎内にいるとき、お臍の穴から、
僕の生れる家の中を覗いてみて、
「こいつは、いけねえ」
と、思った。頭の禿げかかった親父と、
それに相当した婆(ばば)とが、薄暗くって、小汚く、
恐ろしく小さな家の中に、坐っているのである。
だが、神様から、ここへ生れて出ろと、云われたから、
「仕方がねえや」
と、覚悟したが、そのときから、貧乏には慣れている。

しかし、苦学の果て、日本の最高学府・東京大学に
入学金、授業料免除の特待生となり、卒業した。

数年後、ある政治家の秘書をしていたとき、
とんでもない、資産家のお嬢様に見初められ、
逆玉で、婿入りした。
そして、そのままの勢いで、政治家になった。

順風満帆、ときの、オバカお坊ちゃま宰相から、
財務大臣に任命された。
このお方、生れたときから、お金持ちで育ったせいか、
「貧乏」と云う日本語が、どういう意味なのか、
皆目、解らないらしい。
しかも、僕は、いくら貧乏でも、
「嘘はつくな!嘘をつけば口が曲がる!」
と、親から教えられてきたのだが、平気で嘘をつく。
だからか、いつでも口が曲がっている。

残念ではあるが、この辺りから、僕の歯車が狂いはじめた。
体調のすぐれないまま、出席した世界会議で、
大好きなワインを、「ゴックン」して、
醜態をさらしてしまい、大臣を辞任。

しかも、「よっ!日本一!」などと、持ち上げてくれた妻にも、
随行の某新聞記者、越後屋知子嬢との浮気がバレ、
ついには、妻から三下り半を突きつけられて、
今また、薄暗くって、小汚く、恐ろしく狭い部屋にいる。
なにせ、僕は、貧乏には慣れているのだ。

でも、目覚めたとき、ふと思う。
-この部屋って、ひょっとして‥‥?-

(直木三十五著:貧乏一期<副題・わが落胆の記>
 をパロディ化してみました‥‥)

by don-viajero | 2009-02-21 21:22 | 超短編小説 | Comments(2)
Commented by riojiji at 2009-02-22 08:37 x

 この超短編パロディ小説 『わが落胆の記』に対して
直木賞 超短編部門賞を授与します。
今後 この受賞を機に 我々をもっと楽しませてくれることを
願って止みません。

                         平成21年2月吉日
Commented by DON VIAJERO at 2009-02-22 08:57 x
おありがとうございます!
喜んでお受けいたします!

先日「ラジオ深夜便」で貧乏一期・二期・三期を
やっていたとき丁度、目を覚ましていたんだ。
ーオッ!この書き出し、使えるね!-
ってな調子で、なんとも我々国民にとって
歯がゆい状況を面白おかしく書けないものか、
思案していたところでした。


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