2009年 02月 22日
薄暗くって、小汚く、狭い部屋の隣から、 なにやら、ブツブツつぶやく声が、聞こえる。 「オレは経済通で、外交には明るいんだ!」 どうやら、あのお方らしい。 どうせ、口をひん曲げての独り言だろう。 親族、株主たちが、ヤツが会社を継がず、 弟に任せたことに、諸手を挙げて、 喜んだことを、僕は知っている。 「オレは経営者感覚を持っている」 なんてほざいても、誰も信用しない。 しかも、すでに継いだ会社の一つを 潰してしまっているではないか。 もう一方の壁からは、 「笑っちゃうよ!」って言いながら、 エルビスの曲を、口ずさみながら、 ステップを踏んでいる、変人がいるらしい。 遠く離れた部屋からは、大声で、 「アメリカが‥‥!こんなはずではなかった!」 と言いながら、経済専門用語を並べたって、 喋り捲っているヤツもいる。 目の前の、やはり薄暗い大部屋の、 数段高く積まれた畳の上には、 指定暴力団・森組の森悪朗会長と、 草加組会長の池田鬼作がデンと、坐っている。 その下の、冷たい板の間には、うな垂れた 僕の顔見知りの連中が、シーンとしていた。 なかには、涙ぐんでいるヤツもいた‥‥。 僕は思った。 これは『わが落胆』ではなく、 『わが友らの落胆』であった‥‥と。
by don-viajero
| 2009-02-22 12:50
| 超短編小説
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