陽気なイエスタデイ

donviajero.exblog.jp
ブログトップ
2009年 04月 03日

超短編小説 『家族』

自ら選んだ結果、守ってきた家族。妻と子。
そして時を経て、その子らが選んだ配偶者や子供たち。

一族揃って、楽しげに、桜の咲き誇った河口近くの堤防を、
新たに仲間入りしたポメラニアンを伴って散歩をしていた。
ウラウラと長閑な陽光を浴び、幸せに浸っていた。
不思議なことに、周りには他の人の気配すらない。

リードを引いていた私を小さな体のくせに、
グイグイと強引に先を急ぐ家族の一員になったばかりの小犬。
何か目的でもあるかのように‥‥。
家族とはますます離れてゆく。

突然、現れた光の中に犬とともに吸い込まれた。
乱雑で薄暗い光景のなかに、
選ばれなかった人生が、死屍累々と散っていた。

あまり騒がない小犬が激しく吠え出した。
暗がりから真っ黒い一匹の犬が飛び出してきた。
こちらを見た。
-あっ!以前飼っていた愛犬のマックだ!-
立ち止まり、悲しげな目を投げかけて暗闇に消えた。

出逢う人々は異口同音に、
「私のことは忘れてください。」
そう呟いていた。

再び、強い光が現れ、家族の前に出た。
彼らはにこやかな笑みを浮かべ私と小犬を迎えた。

何事もなかったかのように‥‥。

by don-viajero | 2009-04-03 21:08 | | Comments(0)


<< 南極大陸      体育教師 >>