陽気なイエスタデイ

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2009年 05月 18日

著莪(シャガ)

元々、原野だった場所に居を構えて四半世紀。
周りには赤松をはじめ、山桜の大木やブナ、コナラ、
カラマツetcの木々の若芽が、今は覆っている。

その木々の下では、一番始めに薄紫色のミツバツツジが
花をつけ、続いてオニツツジ(レンゲツツジ)や
ヤマツツジのオレンジの花々が咲き、
後から植えた白いリュウキュウツツジや
真紅のものまでが、競い合うように咲き誇っている。
ときおり、アゲハ蝶の仲間が蜜を吸いにやってくる。

夏で言えば梔子(クチナシ)、秋では金木犀(キンモクセイ)。
春はなんといっても沈丁花(ジンチョウゲ)の香りだ。
この三種は明らかにその香りを運ぶ塊(かたまり)があって、
その塊のなかを自分が横切ったり、塊を風が運んできたりして
その存在に気付く。

しかし、色とりどりに咲き乱れるツツジたちに囲まれた
我が家の庭は、その辺り一面の空気が塊という境界を
もたずに、さりげなく素敵な甘さに占領されている。

そんななかにあって、日陰の木漏れ日のなかに、
楚々と小さな花びらを広げている自生の著莪がある。
そっと鼻を近づければ、ほのかな甘い香り。

日本のアヤメ科のなかで唯一常緑種だ。
花は一日しかもたず、開花した翌日には萎んでしまう。
それでも次から次へと新しく花が開く。
数日でももてば、もっと華やかであろうと思うのだが、
それゆえ、この花は楚々としているのである。

by don-viajero | 2009-05-18 20:48 | エッセー | Comments(0)


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