2009年 05月 28日
真っ暗闇のなかに放り出されたように、 そこがどこなのか皆目解らなかった。 目が慣れるに従い、 おおよその概観を把握できた。 物音一つしない、静寂に包まれた湖。 その湖畔にぼんやり立っていた。 はるか向こう岸にある黒い塊のような山が、 鏡のように凪いだ水面(みなも)に映し出されている。 湖を覆うブルーなモノトーンが、 徐々に明度を増してゆく。 いまだにすべてが止まっているかのようだ。 突然、生ぬるい風が頬を撫でた。 一艘の手漕ぎ舟がこちらに向かって、 舐めるように湖面を滑ってくる。 被り笠の下から尉面(じょうめん)のような 顔をした古老が低い声で言った。 「お待ちしておりました‥‥」 湖に背を向け、踵を返し夢中で走った。 右足を前へ、左足を前へ‥‥。 足の裏が地面に吸い込まれるようで上手く動かせない。 もがく。そしてまたもがく。兎に角もがく‥‥。 目を覚ますとタオルケットが足に絡みつき、 ブルーのカーテンの隙間から朝日が零れていた。 *尉面‥‥老翁の相をあらわす能面。
by don-viajero
| 2009-05-28 20:12
| 夢
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