陽気なイエスタデイ

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2009年 06月 14日

屏風岩

宙(そら)に舞った。

ほんの0コンマ何秒かの間に20余年の人生が
走馬灯のように駆け巡った。
-あぁ、これで俺は死ぬんだ‥‥-
そう思った。

今から34年前、1975年の6月15日。
前穂高屏風岩・一ルンゼ上部で滑落した。
核心部も終え、急峻な雪渓をステップカットを
しながら「屏風の頭」を目指して一歩一歩登っていた。
足元の雪が崩れそのまま滑り落ち、
しこたま膝を岩に叩きつけられ宙に浮いた。

後にも先にも『死』というものに
直面したのは、これ一回きりだ。

6月に入り、東京も梅雨入り宣言がされ、
毎日降り続く雨に、心まで湿気に捕われていた。

そんな憂鬱な日々を過ごしていたとき、
信州にいる山岳同人『餓鬼』の仲間、
S氏から手紙を受け取った。
-天気と都合が良ければ一ルンゼをやりに行こう!-
折り返し、6月14日からの入山予定を送った。

久しぶりに山行記を開いて、この転落の顛末を
綴った登攀記を読んだ。ただ、この記の最後には、
「レーテの河の水を飲みたい‥‥。」
で締められていた。

当時、この一文が示すように、
梅雨時の湿気ばかりでなく、よほど悶々とした日々を
送っていただろう苦い青春時代を想い返すのは、
そう難しいことではなかった‥‥。
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        屏風岩一ルンゼ取り付け

by don-viajero | 2009-06-14 20:18 | | Comments(0)


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