2009年 07月 05日
ウズベキスタン・サマルカンド発タシケント行きの 長距離バス(6H/約400円)は、出発間際には ほぼ満員になっていた。停車するたびに大きな荷を抱えて 乗り込んでくる人々で、首都タシケントに着くころには、 身動きできないぐらい混んでいた。 バスは終点・タシケント国際空港に到着。 いつものように最後尾に坐っていた私は最後に降りた。 下車してウロウロしている乗客のなかから、 一人の若い娘(こ)に声をかけられた。 瞬きをするたびに、風でも起こしそうな大きな目をした チャーミングな女の子だった。 「日本人のかたですか?」 「そうですが‥‥」久しぶりに交わした日本語だった。 そういえば、サマルカンドのレギスタン広場でチラッと 見かけた人だった。一人で歩いていた。 -ひょっとして、日本人かな?-そのときには、そう思った。 「ホテルはどこですか?」 「サヨハットホテルです!」 「それなら私と同じです!!」 「じゃぁ、白タクでも捕まえて一緒に行こうか?」 「私、地下鉄の乗り方知っていますから地下鉄で行きましょう!」 タシケント市内の観光をバスか地下鉄かで迷っていた私には、 その乗り方を経験することは願ってもないことであった。 (一乗車・10/Cスム=約7円。どこで降りても同一料金) 車内ではいろいろなことを訊ねてみた。 「何故、女の子一人だけでのウズベキスタンなの?」 「この国に一緒に来てくれるような友だちがいなかったから‥」 「学生さんかい?」 「卒業旅行で、外務省に内定しているの!」 彼女の大学がどこなのかは推して知るべしだったのだが、 「どこの大学?」愚問だった。返ってきたのは案の定、東京大学。 -現役東大生!しかもチャーミングな女子大生!!- 少しばかり奇妙な興奮を覚えたことを記憶している。 ホテルで休息をとったあと、近くのレストランで 夕食を共にした。そこで、帰国便が同じであることも分かった。 搭乗口近くにあるたった二つの小さな免税店は、 田舎の駄菓子屋のような粗末なガラスのショーケースに 申し訳程度の品物があるだけで、その狭い空間には、 場違いな壊れかけた、明らかに安物の椅子が並んでいる。 ソウルへ電器製品の買出しにでも行くだろう 厳(いか)つい男どもで埋まっている。 そんな椅子にもたれかけながらウトウトしていたときだ。 「Mさぁ~~~~ん!」 驚いて、周りのみんなが振り向くような大声は、 狭い待合室の汚れてくすんだ壁に響き渡った。 もう二度とあんな大きな声で自分の名を、 しかも、現役東大女学生から呼ばれることはないだろう‥‥。
by don-viajero
| 2009-07-05 07:41
| ◆旅/全般◆
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