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陽気なイエスタデイ

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2009年 07月 22日

超短編小説 『野球少年』

「こんにちは!」
元気な声が響き、玄関を開けると、野球帽を被った、
この辺りでは見かけない少年が立っていた。

「お父さんが、これをおじさんちに持っていってくれって!」
「なにかな?」
宛先も差出人も書かれていない封書を渡された。
「それじゃぁ、僕、ちゃんと渡したヨ!帰るネ!」
「チョット‥、待って!君のお父さんって‥?」
少年はあっという間に走り去ってしまった。
その後ろ姿に見覚えが‥‥。

真っ白な封書を開けてみた。
それは遥か昔、少年野球に没頭していたころの
私が書いた『僕の夢』という題の作文だった。
-大きくなったら長島さんや王さんのような
 野球選手になる!‥‥-

高校時代、甲子園を目指してやっていた野球。
三年の春、練習試合で致命的な怪我をしてしまい、
悔しい思いのまま、スタンドから喉を嗄(か)らして
応援したチームメイトの活躍。地区の決勝戦で敗れ去った。

しばらくして、再び玄関のチャイムが鳴った。
「ごめんください‥‥。」
頭のなかが混乱したまま、戸を開けると、
白髪に長く伸びた白髭の老人が所在無く立っていた。
「どちらさまですか?」
「あ、そうそう、貴方に一言言いたくて‥‥。」
「なにをですか‥‥?」
「迷いを捨てなさい!それだけです!」
そう言い残し、踵を返し帰って行った。

私は決心した。この数週間悩み続けていた、
少年野球の監督を引き受けることを‥‥。

by don-viajero | 2009-07-22 20:04 | 超短編小説 | Comments(0)


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