陽気なイエスタデイ

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2009年 08月 20日

超短編小説 『少年』

まったりとした真夏の昼下がり。
心地よい風が微睡(まどろみ)へと誘い込んだ‥‥。

突然、私の前に現れた少年は、
あまりにも不躾な態度ではあったが、
その物怖じしない仕草に、私はすっかり、
気圧(けお)されてしまった。

「おじさん!ボク、おじさんのこと
 何だって知っているよ!」
「そうなの‥?で、君はどこの子なの???」
「そんなこと、どうだっていいじゃん!」
まるで、道ばたにでも落ちているような物言いだった。
「君は、私の何を知っているのかね?」
眉宇(びう)を曇らせて少年に訊ねた。
「じゃぁ、言ってやろうか‥‥。
 ボクの考えも言うから、黙って聞いていてね!」

あろうことか、その少年は私の琴線に触れる
ことまでも、滔々と語りだした。
ちょうど、そのころいろいろなことで、
懊悩(おうのう)する日々を送っていた。
「どうして、君はそんなことを知っているのかな?」
「だって‥。ボクはおじさんなんだもん!」
「君が‥、私‥???」
「そうさ!ボクはおじさんの夢のなかでは、
 成長しないおじさんなんだよ!」
「つまり‥。君は‥わ・た・し・ってことか!
 これからも時々現れて、話をしようじゃないか!」
「あぁ、いつだっていいよ!
 でもね、きっとおじさんの前に出るときは、
 おじさんが悩んでいるとき‥か‥な‥?」
立ち去ろうとしていた少年の顔がこちらを向いた。
「わかった!じゃぁ、またね!
 ありがとう、さようなら‥!」
少年の笑顔がパッと弾けた‥‥そんな気がした。

そのとき、ひゅるっと風が鳴き、私の頬を殴った‥‥。

by don-viajero | 2009-08-20 19:52 | | Comments(0)


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