2010年 06月 20日
つい先日まで、梅雨入りしてからの週間天気予報はず~っと 「傘マーク」がついていた。 爽快とは言えない温度と湿度のなかで、心までもが湿気に 捕われてしまいそうなこの時季、よく思い出すのが屏風で 落ちてからの鬱陶しく、ため息ばかりついていた毎日だ。 ついさっき呑み込んだものをゆっくりため息として吐き出した ところで、いったん胸に戻ったぶん、湿り気と、重みと、苦みが 増してゆくだけだった。 そんな繰り返しの朝、下北沢にある場末の映画館の看板が 目に入った。翌日、朝からサンドイッチを作り、その映画館に 出かけた。すでに盛りの過ぎた映画が三本立てで1000円。 お客はいつもガラガラだったが、そのころが人生で一番 映画を観た時代であろう。 「世紀の色男」?アラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモンド。 フランスの二大スター主演によるギャング映画「ボルサリーノ」 シリーズや、キャサリン・ロスに心ときめかした「明日に向って撃て」、 壮絶なラストシーンの「俺たちに明日はない」や「スティング」‥‥etc。 大学を一年休学している間、山仲間の妹さんに又貸ししていた 部屋に、再四年のとき再び住むようになってからの梅雨時6月、 長い旅から帰って腑抜けになってしまった心を満たしてくれたのは、 やはり足繁く通ったあの映画館だった。 そのころ、隣りの「893」さんが別荘(刑務所)へ行っていたので、 音量を上げ、窓越しから遠くに見える小糠雨(こぬかあめ)に咽ぶ 東京タワーを眺めながら、聴いていたのが石川セリのアルバム 「気まぐれ」だった。なかでも「ダンスはうまく踊れない」は 井上陽水が、のちに妻となるセリと付き合い始めのころ、 気を引くために目の前で30分ほどで作ってプレゼントした曲だ。 雨に濡れても、楽しみはいくらでもある‥‥。
by don-viajero
| 2010-06-20 15:15
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