陽気なイエスタデイ

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2010年 06月 23日

幽霊・序章

「人はなぜ追憶を語るのだろうか。

 どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の

 神話があるものだ。その神話は次第にうすれ、

 やがて時間の深みのなかに姿を失うように見える。

 ―だが、あのおぼろな昔に人の心に忍び込み、
 
 そっと爪跡を残していった事柄を、人は知らず知らず、

 くる年もくる年も反芻(はんすう)し続けているものらしい。

 そうした所作は死ぬまでいつまでも続いてゆくことだろう。

 それにしても、人はそんな反芻をまったく無意識に

 続けながら、なぜかふっと目覚めることがある。わけもなく

 桑の葉に穴をあけている蚕が、自分の咀嚼(そしゃく)する

 微かな音に気付いて、不安げに首をもたげてみるようなものだ。

 そんなとき、蚕はどんな気持ちがするのだろうか。」
 

by don-viajero | 2010-06-23 20:17 | | Comments(0)


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