2011年 03月 07日
宿は、かつて数万人を前にフィデレ・カストロが何度も 演説した、キューバ国家の中枢が集まる革命広場と、 旧市街のちょうど真ん中ぐらいだった。 トリニダーと同じように、キューバという国を旅慣れた 最後の一夜のハバナでも、キューバの人たちとの距離が 縮まるカサ・パルティクラルを楽しみにしていた。やはり、 お客を待っていたルナさんにしてもガッカリしたことだろう。 ただ、ホセ・マルティの生誕を祝う前日のビエハ広場での 寸劇や、キューバを離れる当日の子供たちの行進に 出くわしたのは幸運だった。 世界遺産に指定された旧市街のなかで、ごく普通に日常を 送っている人々をほんのひととき垣間見ただけだ。 昼過ぎになれば、どこからともなく聴こえてくる生演奏。 陽気な笑い声。本やメディア媒体からでは、絶対に解らない この街の持つ飽くことのない雰囲気や感覚にもっと、もっと 浸っていたかった。 しかし、それには時間があまりにも少な過ぎた。 朝、見納めに足を運んだ旧市街のカピトリオ前に停めた タクシーの横で、所在無げにしていた運ちゃんに、 空港までの料金を交渉する。彼はちゃんと約束通り 午後1時半にカサへ迎えに来てくれた。後部座席に深く もたれかかり、全開にした窓から名残惜しそうな眼差しで、 流れてゆく景色を追うようにして見つめる。空港間近で 擦れ違ったポンコツクラッシック車(ぐるま)の渇いた エンジン音が、鼓膜にいつまでも心地よく響いていた。 閑散としたターミナル2(国際線のほとんどはターミナル3) に横付けしたタクシーの運ちゃんには、約束の料金とは別に 残った10MN札(人民ペソ)を渡す。神妙な顔で口元を緩めた。 彼が去ったあと、雲ひとつ浮かんでいない空に向かい、 大声で「Gracias Cuba ! Adios Cuba !」。 そう叫び、出発ロビーへと入っていった。 *‥‥今後、テーマごとに分けた写真を載せていきます。
by don-viajero
| 2011-03-07 21:01
| Cuba/Mexico
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