陽気なイエスタデイ

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2011年 07月 26日

裸の幽霊?

山岳部・高校二年の夏。
ちょうど夏休みに入ったばかりの今頃かな‥‥?
三年生との最後の山行の岳沢合宿も終わり、
上高地のB.Cでの打ち上げ。夕食後、同行した顧問
(美術部の顧問でもあるが‥)のワタサ(あだ名)が
「みんなで“裸の幽霊”を見に行こうか?!」
三年生だけは、その意味が何を指すのか判っていた
みたいであるが、新人の一年生や二年の我々は
「??????」
一人の先輩が含み笑いを浮かべ、独り言のように
静かに言う。
「行きたい者は黙ってついて来ればいいんだ‥」

山の夜更けは早い。9時過ぎともなると河童橋の
周辺をうろつく者たちも、すっかり少なくなっている。
五〇〇ロッジから少し離れた薄暗い場所まで来ると、
ヘッドランプの灯りを消し、背丈ほどもあるクマザサを
掻き分け、静かに登ってゆく。
「シィ~!音をたてるな!幽霊が逃げちまうぞ!!!」
先輩の睨みつけるような、威圧的な物言いに気圧され、
みんなザザッと揺れる葉を押さえるように進んでゆく。

僅かな灯りが零れてくる尾根の反対側に回ると、
そこには“裸の幽霊”がいっぱいいるではないか!
男も女も‥‥。もちろん、男なんかに用はない!
用意周到のワタサから双眼鏡を順番に渡され、食い入る
ように覗き込む。なかでも新人のS君は、零れ落ちそうな
大きな目玉をギラギラ輝かせ、固唾を呑んで見入っている。
彼ばかりではない。みんなが頬を緩め、息を殺してうっとりと
見惚(みと)れている‥‥。
双眼鏡を手にしていた奴が、興奮をそぉっと押し殺すように
「オイ!オイ!いま入って来たの、
 レジにいたあの可愛いお姉ちゃんだぜ!」
超が付くほど真面目な次期部長のM君が声を殺して呟く。
「明日、帰り際、土産物覗いて行こうぜ!」
「うん、うん、そうしようぜ!」
シ~ンっと静まり返った暗闇のなかで、誰かがヨダレでも
垂らすように発した小声が耳の奥に響く‥‥。

残念ながら、いまはこの尾根に這い上がれないように
なっている。“裸の幽霊”は閉じ込められてしまった‥‥。

by don-viajero | 2011-07-26 19:34 | | Comments(0)


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