陽気なイエスタデイ

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2011年 10月 26日

珍説・鶴の恩返し

昔、昔、あるところに強欲なじいさんとばあさんが住んで
いました。

寒い雪のある日、じいさんは罠に掛かっていた一羽の貧弱で、
背中に墨でも付けているような小汚い鶴を見つけました。
でも、気持ち悪がったじいさんは、
「こんなに痩せ細っていては、肉などないし、鶏ガラにも
 ならんわ!今度は丸々太ってこいよぉ~!」
そう言って、逃がしてやりました。

その翌日、雪が深々と降り積もる夜、戸を叩く音が
聞こえました。開けると、とても痩せた娘が立っていました。
「道に迷ってしまいました。
 どうか一晩お泊めください‥‥」
「あぁ、いいとも。でも泊まる以上は金を貰うよ!」
「はい、結構ですとも。泊めていただくだけでも
 ありがたいので‥‥」
次の日も次の日も、雪が降り続きました。娘は、
「おじいさん、私はお金がありませんから、
 お礼に綺麗な布を織りたいと思います。
 街へ行って糸を買ってきてください。
 そのかわり私が機を織っているあいだ、
 絶対覗かないで下さい」

彼女が織ったその真っ白な織物は、町でたいそうな値段で
売れました。じいさんは糸のほかにも、おいしいご馳走も
山のように買って帰りました。娘がまた部屋へ閉じこもると
じいさんが、
「なぁ、ばあさんや、あの娘さんはきっと、わしが助けた
 鶴に違いない。これからもしっかりおいしいもんをたらふく
 食べてもらって、綺麗な織物をたくさん作ってもらおう!」
「そうじゃのぉ。だから決してあの部屋は覗かないように
 しなくてはのぉ、じいさんや‥‥」
数日後、織物を購入した者たちがわんさか押し寄せ、
「あんな見てくれだけよくても粗末な織物は要らん!
 金を返せ!」
と怒鳴り込んで来たのでした。すると
「おじいさん、おばあさん、私はおじいさんに助けられた
 墨で汚れたサギです。これで山に帰ります。お達者で‥‥」
すっかり元気になった娘は、綺麗なサギになって飛び立って
いきました。地上ではじいさんとばあさんが
「詐欺だぁ~!詐欺だぁ~!!!」
と彼らが住む佐木(さぎ)村に、いつまでも響き渡るような
大声を張り上げ続けました‥‥とさ!

by don-viajero | 2011-10-26 20:23 | 超短編小説 | Comments(0)


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