2012年 07月 04日
大人になる前‥‥。それは、ほんの些細なことでも“大人”と 張り合うようになってきた、微妙な距離感のある青春時代より、 もっと遡ることを意味している。 本の世界では、きよし少年を通しての重松清作品を数多く 読んできた‥‥つもりだ。でも、それはあくまで少年の目から 見た世界であり、私には、もう一方の少女たちの視線で見る ことも、想像することも無理なことである。 ここひと月で「森 絵都(もり えと)」の作品を三冊立て続けに 読んだ。 一冊目は「永遠の出口」。小学三年から高校三年までの、多感な 一人の少女を描いた作品だ。 二冊目は「宇宙のみなしご」。私にも覚えがある。友だちの家の 屋根に一緒に上って見た夕焼け。その屋根の上で立ち上がって、 どちらが遠くに飛ばせるか描いた放物線。こんなこと、大人に なってからはできないことだ。 三冊目は2006年直木賞受賞作品の「風に舞いあがるビニールシート」。 どちらかというと、児童文学を得意としてきたらしい筆者が、 懸命に何かを求めて生きる“大人”の物語を描いた、心に響く 六つの短編集だ。 子どもには出来なくて、大人には出来ること。逆にアラカンになった からこそ見えてきた、大人になれば出来ないこと、子どもだったから こそ出来たこと‥‥。 先日、早朝ランの帰り道。プ~ンと匂ってきた、とってもとっても 懐かしい香り。いまの子どもたちには、見向きもされずに残っている、 大きな桑の木に実ったクロ紫色の大きなクワズミ。数粒取ってみた。 摘んだ指と手の平はあっという間に濃い紫色に染まる。口に 含んでみた。その甘酸っぱい粒々を舌で転がしながら、瞼を閉じると、 そこには唇をぶんど色に染めて、夢中で貪る少年の姿があった‥‥。
by don-viajero
| 2012-07-04 19:53
| 本
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