2007年 08月 11日
夏が来るといつも思い出す。 走ることに関してはトンと駄目だった私ではあったのだが、 泳ぎでは周りの者より、贔屓目にみても頭一つ秀でていた。 『陸(おか)に上がった河童』である。 そのころは、今のようなスイミングスクールなどという洒落た ものはなかった。さしずめ、学校のプール以外、私たち夏の スクールはもっぱら川だった。 流れに逆らってのクロール。素潜りでにがむ(掴む)魚たち。 徒党を組んで、今週はこっちの川、来週はあっちの川と 渡り歩いたものだった。 中学三年間の水泳クラスマッチでは、毎年、最終種目 自由形リレーのアンカーを務めた。三年のときには、 そのリレーで一位、クラスは総合優勝に輝いた。 成績優秀でスポーツ万能。しかも、容姿端麗とくれば、 どの子にとっても憧れを抱くに違いない。 小学校から高校時代を通して、これに当てはまる人物は、 私の近辺にはいなかった。どれかが欠落していた。 『天は二物を与えず』だ。 ただ一人、嫌な奴がいた。 成績は抜群ではあったが、スポーツはからっきし駄目。 彼女はよく言えば合理主義者。1たす1は2。水は高いところから 低いところに流れる。弱い者は負けても仕方がない。貧乏は悪。 典型的なお金持ちのわがままお嬢さん。 数年前の夏、ある催しをきっかけに高校の同級会開催の 通知をもらった。 久しぶりに集まった仲間は、すでに頭の薄くなった者もいれば、 昔と少しも変わっていない者もいる。 私が嫌いだった彼女は欠席。 ハガキのメッセージにはこう書かれていた。 「一人息子は晴れて東京大学に入り‥‥云々」 私自身、子育ても終わり、余して生きているかどうかはともかく、 暢気に暮らしている。まるで『河童の屁』のように‥‥。
by don-viajero
| 2007-08-11 08:56
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