2007年 09月 10日
そのころ北海道では父の従弟が四人、それぞれの地で暮らしていた。 一人は礼文島、一人は網走、そして残る二人は稚内。 さすがに冬の島まで渡ろうという気にはなれず、 北の果て、稚内まで行くことにした。 「奇貨(きか)居(お)くべし」といったところであろうか‥‥。 函館に着いた私は街を散策することなく、14:30発 「ニセコ2号」に飛び乗った。 吹雪はますます激しくなり、列車は長万部駅でストップ。 小樽経由は運行中止となり、札幌行きを希望する乗客全員が 苫小牧経由の「すずらん2号」に乗り換える。 札幌駅に着いたのはすでに夜8時を過ぎていた。 すべてにおいて北の中心である札幌の空気に触れるため改札を出る。 一時間ほどブラつき、再び駅に戻り稚内行21:20発に乗り込む。 翌日6:30、日本最北端の街、稚内に到着。 早速、一人の叔父に連絡をして迎えに来てもらった。 朝食を馳走になっている時である。叔父が 「もう一人のおじさんNが経営しているタラ加工工場の手伝いに行こう」 「はい、わかりました」 と言ってはみたものの内心は夜行で疲れた体を午前中ぐらい 休ませたかったのだが‥‥。 「Nも逢うのを楽しみに待っているぞ!それに今、一番忙しい時なんだ! 若者は貴重な戦力だ」 もはや、ここまで言われてしまえば行かざるをえない。 工場に着き、挨拶もそこそこにハイウェーダー*1)に着替えさせられ、 ベルトコンベァーの前に立つ。初めは面白かった。 どでかいタラの腹から『バクダン』という鱈子を引っ張り出す。 それを取り出した後はトビに引っ掛けコンベァーに載せる。 なかなかの力仕事であった。いくら楽しかったとはいえ、夜行で来た身、 疲れがドッと出る。全身潮に塗れ、山の匂いが消え、今度は海の匂いだ。 皮肉なものだ。 夕食は従業員みんなで加工したばかりのタラ料理。 疲れも手伝い、料理も酒も美味しく頂いた。 とりわけタラのエラの刺身は逸品であった。 立て付けのあまり良くない休憩室のガラス戸をガタガタ揺らす風。 外は猛吹雪。横殴りのブリザードが吹き荒れている。 まるで荒れ狂った冬山だ‥‥。北の地に住む人々の生活の厳しさを 少しでも味わえたような気がする‥‥。 *1)ハイウェーダー‥胸まであるゴム製の防水ズボン 足元注視!下駄履きで~す!
by don-viajero
| 2007-09-10 20:24
| ◆旅/全般◆
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