陽気なイエスタデイ

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2007年 10月 15日

サギ/Ⅰ

サギはサギでも白鷺やアオサギの話ではない。
前回のマルチに絡んでの「詐欺」である。

大学2年の時だ。
年がら年中下駄履きで、着る物にも無頓着な私ではあったが、
スーツの一着ぐらい欲しいと思い、仕送りやアルバイト代の
中から少しずつ貯めていた。

ある日の学校帰り、辺りから金木犀の匂いが香ってくる暗い夜道。
一台のワンボックスカーが背後からそぉ~っと近づいてきた。
「お兄さん!丸井の者だけど訪問販売のスーツ、一着買わない?」
そう言い寄ってきたのは、私の横に停車させ、運転席から降りてきた
ビシっとネクタイを締め、こざっぱりした三十搦(がら)みの
人物だった。やはりスーツに身を包んだ助手席の青年が、
「店舗で買うより2割安くしているんですよ!」
「ちょっと見せてください」
街灯のある明るいところまで移動し、何着か拝見した。
「いくらくらいなの?」
「3万円から4万円クラスです」
「チョット待って!部屋に行ってお金を持ってくる」

二人は車でゆっくり私の後をついてくる。
お金を用意した私は、近くにある丸井まで同乗した。
もう一度、駐車場で気に入った一着を確認すると
「3万円丁度でいいよ!」
その場で代金を支払うと、もう一人の相棒が
「先に紳士服売り場に行っていてください。箱詰めにしますから
私たちはあとから行きます」
「はい。わかりました」

売り場で待たされること10分。
待てど暮らせど現れないので、その場に居合わせた女子店員に、
「あのぉ、〇〇さんはまだ来ませんか?」
「そんな名前の人はいませんよ!」
―騙された!―
あまりのドジで警察に届けることすら考えが及ばなかった。

金木犀の香りがする頃になると、いつもこの苦い思い出が脳みその
片隅を擽(くすぐ)るのである‥‥。

by don-viajero | 2007-10-15 20:43 | エッセー | Comments(0)


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