陽気なイエスタデイ

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2008年 09月 26日

超短編小説 『占い』

「今日の牡羊座のラッキーカラーは赤です。
 特に男性のかたは赤地に模様の入ったネクタイがよろしいかと‥‥。
 そして、どこかポイントとして明るいブルーがあればもっと
 幸運を呼び込むことでしょう‥‥。」

独り者の柳沢慎介は、毎朝そうしているように出勤前、
テレビから流れる星占いにじっと耳を傾けていた。
余興用に買っておいた赤地に大きな白の水玉模様の
ネクタイを締め、足にはど派手なブルーの靴下を履いた。
-よっしゃ!これで今日はなんかえぇことありそうな
 気がしてきたでぇ!!!」

通勤電車のなかでは彼のあまりにアンバランスなネクタイを
じろじろ見られはしたが、そんなことにはいっこうに構わず、
意気揚々と会社へと向かった。

部署のドアを開けるなり、先に出社していた同僚の
井口隆が目を丸くして、
「おい!柳沢!お前芸人みたいにけったいな
 ネクタイしよって、どないしたんや?」
「は~い!これはワテの今日のラッキーカラーで~す!
 ついでにこれも見てくださ~い!」
ズボンの裾を上げて見せた。
「ますます、芸人やな!そんな占いなんか、
 よう毎日信じて‥‥アフォちゃうか!
 しっかも、女子高生でもあるまいし、
 えぇおっちゃんがやでぇ‥‥。お前、大物になれへんで!
 そないなもん当たるわけないやろぉが‥‥。
 日本全国、牡羊座の人間がどないおるん思ってるんや!
 俺は占いなんてもんは絶対信用せぃへんで!」
「まぁ、平均して十二分の一やろうな‥‥。
 えぇわい!ワテは小物のまんまでも‥‥。」
柳沢は少しばかりふてくされながら、そう小声で答えた。
「あはははは‥‥。柳沢!
 お前って、ほんま几帳面なやっちゃなぁ!
 ひょっとして、A型ちゃうか!?」
そう言って井口は豪快に大笑いした。



 

by don-viajero | 2008-09-26 20:50 | 超短編小説 | Comments(0)


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