2008年 10月 11日
1998年3月21日。 真っ青な空の下、吐く息だけが白く際立つ早朝、 ホテルのすぐそばにある『グル・エミル』の廟に立っていた。 一代でその帝国を築いたチムール大帝が眠る墓だ。 人影の疎らな旧市街を抜け『アフラシャブの丘』へ足を延ばした。 見渡す限り茫漠たる丘である。起伏の激しい原野には、 枯れた背の低いラクダ草があたり一面覆っている。 その昔、ここで人々が生活していたとは想像し難い、 生命感のかけらもない岩のころがる丘である。 チンギス汗が来襲するまで、街はここに栄え、 この土中には華やいだ跡が秘められている。 遠くアフガンのヘラートとともに生きしものすべてを 焼き尽くされた街の跡。シルクロードの栄枯盛衰。 干からびたレンガの家々が墨を流したように色を 失っているのとは対照的に、朝日を浴び、 そこここに点在する突き出たブルーのドームだけが 濃い群青色に輝いて浮かび上がる。 新しくできた『青の都・サマルカンド』だ。 「チンギス汗は破壊し、チムールは建設した」という言葉の意味が、 脳みそを駆け巡り、身体中に伝わってくる。 チムールが現在の位置に街を造り、ここを起点として 中央アジアはおろか、北インドからイラン・小アジアに及ぶ 世界帝国を造り上げた、いわばそのときの世界の中心だったのだ。 1998年・冬季長野オリンピックの興奮も冷め止まぬなか、 3月17日、ウズベキスタンに向けて旅立った。 ただし、この旅は完全な自由旅行とはいかなかった。 旧ソ連のしきたりを引きずった『バウチャー』という形式である。 そのため、予め自分で作った行程表を旅行会社に提出し、 ホテルも指定されたところ以外は宿泊することができない。 行程表の中身はさしずめ『一人用パック』といったところか? それでも、十分にこの旅を楽しめたのは、遊牧民の血を 脈々と受け継いだ人々の温かさに触れることができた ことであったかもしれない。
by don-viajero
| 2008-10-11 18:01
| Uzbekistan
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Comments(2)
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riojiji
at 2008-10-13 14:02
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昔、中国西部辺りが シルクロードとばっか思っていた 私でした。
まあ 今でも あの辺りは行ってみたい願望は今でもありますがね。 話はズレますが 小学生の頃担任の 西沢先生が(笑)話してくれた「さまよえる湖」が シルクロードとの最初の出会いでした・・。 さて don-viajero さんが 旅したウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、などなど 行きたいとこがありすぎますな~~。 なんで あの方面に行きたいのか それは きっと一気に「時」を戻してくれるからかもしれませんね。 それと 人の温さですかね。don-viajero さんが我が家に来てその温さの話を聞くのが 好きなワタクシです・・・
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DON VIAJERO
at 2008-10-14 06:54
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