陽気なイエスタデイ

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2008年 12月 25日

『分かれ道・Ⅰ』

その日は春霞に覆われてモヤーっとしている朝だった。

玄関を出ると、目の前に制帽、制服、白手袋をした
見知らぬ男が立っていた。
「おはようございます。お車の用意はできております。」
「はぁん?お車?どこのどなたか知りませんが、
 私は自分の車があります。」
「いえ、それはわかっておりますが、
 今日はあなた様の特別な日でございます。」
男は鉄火面のように表情ひとつ変えずにそう言った。
「はて?特別な日ってなんだろう?
 誕生日でもないし‥‥?」
「兎に角、あの車に乗ってください。」
男が指差したところには、ピカピカに磨き上げられた
黒塗りのハイヤーがエンジンをかけたまま止まっていた。
狐につままれるような感覚で男の指図に従い、
後部座席に座った。

「ところでどちらまでにしますか?」
「そんなこと‥、言われても‥‥。」
「あなた様のご希望の場所、時間へお連れいたします。」
「時間‥‥?ひょっとして‥‥?」
「はい!かしこまりました!」
そう言うやいなや後部座席を遮断するガラスが下りてきて、
白いガスが流れ、私は深い眠りについた。

by don-viajero | 2008-12-25 21:21 | 超短編小説 | Comments(0)


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