陽気なイエスタデイ

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カテゴリ:超短編小説( 89 )


2013年 07月 31日

『猫』

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生れてようやく目が見えるようになった
ばかりの捨て猫を見つけた。

「僕(オス)を育てて下さい!ニャ~」
円(つぶ)らな眼(まなこ)に可愛らしい
猫なで声で訴えているようだった。

ところが、これが大間違いだった。
そもそも猫可愛がりし過ぎたのかもしれないが、
あいつはただただ猫被りをしていただけだった。
その食欲の凄さといったら、
「猫にマタタビ、お女郎に小判」だ。
すっかりデブ猫に成り果て、食事のとき以外は
鼠とらぬ猫で寝てばかりいる。
三年飼っても三日で恩を忘れていやがる。

たまの休日、猫の額ほどの庭弄りで、猫の手も
借りたいというのに、今日もあいつはデカイ腹を
出して高鼾!俺は横目でため息をつきながら、
ひたすらネコ(一輪車)をおし続ける‥‥。

(Illust AC(無料会員)からダウンロード)

by don-viajero | 2013-07-31 20:19 | 超短編小説 | Comments(0)
2013年 07月 29日

『ツバとミツ』

f0140209_17531273.jpg僕は最近まで、ある国の諜報局に勤めていた者だ。

しかし、その機関のあまりにも露骨なやり方に嫌気をさし、
母国の膨大な諜報資料を手土産に今、他国に亡命を
計ったものの、某国際空港のトランジットルームで足止めを
食らっている。

そこで担当者から手渡されたのが、某国の有名な小説だ。
「この本でも読んでいなさい!」
僕の国の言葉に翻訳されたその本は、ただただ長いだけで
内容もチンプンカンプンだったし、そもそも一つ一つの文字の
意味さえも理解不能。数ページで閉じてしまった。

数日後、放り投げていたその本を拾い上げ、手にとってよ~く
見てみた。
-そうか!これはすべての文字が逆に印刷されて
  しまっただけの本だったんだ!!!-
『ツバとミツ』⇒『ツミとバツ』⇒『罪と罰』

-人生とはそんなものかもしれないな!-

by don-viajero | 2013-07-29 20:08 | 超短編小説 | Comments(0)
2013年 03月 17日

超短編小説 『投身』

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「光と影」

何事にも小心で、仕事においても、恋にしてもすべて、
いつでも悪い方へ悪い方へと導かれるように、思考が
穿ち過ぎてゆく。結果‥‥築かれたのは失敗の山ばかり。
それが‥‥、それが僕のいままでの人生だった。
そんな人生から‘おさらば’しよう‥‥。

高所恐怖症でバクバクと高鳴る心臓を、なんとか押さえ
込んではみたものの、もはや寒さによるものなのか、
怖さなのか訳の分からないまま、小刻みにガクガクする
膝の震えを止めることはできない。

僕は今、地上50mの地点に立っている。遥か下のほうから
‘ヒュー ヒュルヒュル’と聞こえてくるもがり笛が誘惑するように、
いっそうの恐怖をそそる。当然目を瞑っていて周りなんか
わからないから、耳だけがすべての事象に鋭敏に反応する。
「そう、すべてを終わらせよう!僕は生まれ変わろう!」
飛び立つ瞬間、細い目を思いっきり見開いた。

「行くぞぉ~!バンジージャ~ンプ!!!」



by don-viajero | 2013-03-17 07:32 | 超短編小説 | Comments(0)
2012年 12月 25日

『Christmas』

A:What did Adam say on the day before Christmas?
B:I have no idea.
A:He said “It’s Christmas, Eve!”

我が家の日捲り英会話から‥‥。

by don-viajero | 2012-12-25 19:30 | 超短編小説 | Comments(0)
2012年 11月 14日

『冬の使者』

A「やっとこさ着いたずら!てきなかったなぁ!!!」

B「おや?おれたちよか、はえぇ連中がいるよ!おどけたなぁ!
  あいつらのまえでに行くとするか!」

C「やっぱ、このへんもおれたちが来るころには、
  しみてさぶくなるなぁ!」

D「お~い、みんな集まれぇ!
  いいか、今年生れた若いもんは係りの人が餌を撒いてくれたら
  “いただきます”食い終わったら“いただきました”って
  ちゃ~んと言うんだぞ!長老たちの言うことは、なから聞いて、
  ぐざられねぇようにな!それから、安曇弁はロシア語よか
  簡単だから、北へ帰るときまでおんじょこかずにしっかり
  覚えておけよ!!!」

奥山が白さを増し、次々とやってくるコハクチョウの群れ。
今年も河原が日を追うごとに賑やかくなってくる‥‥。

(11月12日現在・18羽)

by don-viajero | 2012-11-14 19:27 | 超短編小説 | Comments(0)
2012年 09月 10日

小噺『りんご』

アップル君「僕のりんごかじったのだ~れ?」

サムスン君「僕だよ!」

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by don-viajero | 2012-09-10 19:45 | 超短編小説 | Comments(0)
2012年 08月 24日

『男と女』

女「穴があるわ!」

男「固い棒を持ってるよ!」

女「この穴に入れてよ!」

男「あれがないから駄目だよ!」

女「じゃぁ、あたしが用意するわ!」

男「よ~し!入れるぞぉ~!」

女「あぁ~‥‥外れちゃったぁ~!へたねぇ!」

男「もう1回やれば入るよ!」

女「そうかしら‥‥?あっ入った!」

男「入るって気持ちがいいもんだね!」

(参考:吉本ばなな著『デッドエンドの思い出』より)

by don-viajero | 2012-08-24 19:52 | 超短編小説 | Comments(0)
2012年 08月 12日

『記憶の真実』

誰もいない、微睡(まどろ)んだ午後。

読みかけのものや新たにページを捲る数冊の本を、椅子の
傍らに置く。しかしこの日はどうしたことか、何を読んでも
頭に入らず、ただ文字の列がアリンコの行列みたいにぞろぞろ
通過してゆくだけだった。そっと本を閉じ、遠い過去を探るように
宙を見つめ、静かに瞼を落とした。

いつの間にか、まるで魔法にでもかけられたみたいに、鼻の穴から
漫画の吹き出しの“ZZZ”マークが出ているんじゃないかと思える
ぐらい爆睡していたらしい。

階下からボンヤリした声が聞こえる。
「宅急便で~す!」
急いで階段を駆け降りる。上がり框に小さなダンボール箱が、
ちょこんと置かれていた。送り主の名は知らない人物。空ろな
回路のまま箱を解(ほど)く。単行本『思い出したい記憶』。著者名を
見て驚いた。そこには私の名前が刻まれていた。

年代を追って、克明に私の歴史が記されている。黒く塗り
つぶされた行以外は、楽しかったと思われる事柄だけがある。
それは単なる出来事だけに収まらず、その時々の感情までが
載っているではないか!

知らず知らず時間が過ぎてゆくなかにあって、日めくりが風に
吹かれてパラリと一日前に戻るみたいな、そんな鮮やかな記憶
なんか無い。でもその本の中身は自分でも驚くほど鮮明なもの
だった‥‥。

「宅急便で~す!」
あまりにも大きな呼びかけに、ドキっと目を覚ます。階下に降り、
玄関を開けるといつものにこやかな宅急便屋さんが、
「Mさん、Amazonから届きましたよ!」思い出した。
確か注文したのは、榎本博明著『記憶はウソをつく』だ。

by don-viajero | 2012-08-12 12:28 | 超短編小説 | Comments(0)
2012年 07月 22日

タイムマシン

夏の背の高くなって乾いた草のなかを走っていた‥‥。
太陽に照らされ、遠くにキラキラ光る物体をめがけ
もがく様に必死になって向かって行った‥‥。
兎に角、その場所から一刻も早く離れたかった‥‥。
近づくにつれ一つだと思っていた輝く物体は、二つ、三つ、
四つ、五つ‥‥次第に増えていた‥‥。

私は、数十年前の記憶に残っている、街の外れにある
明るい森の草原にいた。そこには明らかに私と判る少年と、
その大勢の友だちが楽しそうに遊んでいた。

でも彼らのほかにそこにいたのは、数十年後の私ばかり
でなく、集っていた少年たちの数十年後の友たちも、
幼い少年たちを遠巻きに取り囲むようにして、黙って
見つめていた。

映像だけが動くのに、音のない世界に慄くようにして、
その場所を離れた。

タイムマシンは自分だけの特殊なものでなく、誰でも簡単に
過去へと運んでくれる乗り物になっていた‥‥。
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夕焼けに染まる東の空

by don-viajero | 2012-07-22 18:09 | 超短編小説 | Comments(0)
2012年 06月 25日

超短編小説 『非常階段』

朝、目覚めるとホテルの非常階段が騒がしい‥‥。
表に出て見上げる。二人の男が揉み合っている‥‥。

顔中包帯を巻かれ、患者服姿の男が大声を
張り上げて言った。
「戻るぜよ!‥あん世界へ!!!」
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by don-viajero | 2012-06-25 20:00 | 超短編小説 | Comments(2)