陽気なイエスタデイ

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カテゴリ:超短編小説( 89 )


2009年 09月 23日

超短編小説 『赤い糸』

私と彼とは、生れたときから『赤い糸』で
結ばれているんじゃないかと思っていた。

あるグループのコンサートで隣り合わせたのが
きっかけ。
-運命の出会いってあるんだ!-
ず~っとそう思っていた。
あらゆる趣味やフィーリング、音楽まで
すべてが合っていた。
ただ一人のロックミュージシャンを除いては‥‥。

いろいろ手を尽くし、私の大好きなそのミュージシャンの
コンサートチケットを二枚手に入れた。
どうにかして彼をあの魅力の虜にさせたかった。

不承不承の彼を連れ立って行った。
会場はものすごい数の観客でいっぱいだった。
人波に押され、私は彼とはぐれてしまった。
必死になって、私と彼との小指に結ばれて見えない
『赤い糸』を頼りに探した。

ところが、どうにかして『赤い糸』を手繰り寄せた先は、
カッコいい見知らぬ男性の小指に繋がれていた。

-新しい恋が始まるのかもしれない?!-
真夏の夜のコンサートだった‥‥。

by don-viajero | 2009-09-23 19:50 | 超短編小説 | Comments(0)
2009年 09月 17日

私的解釈 『一週間』

日曜日に市場へ出かけ、
-食料や足りなくなった生活品、ついでに-
糸と麻を買ってきた。
-ばぁさんが逝ってしまってから
 針仕事は自分でやっている。-

月曜日にお風呂を焚いて、
-入ろうとしたが、寝てしまった。-
火曜日にお風呂に入る。
-一週間分の垢を洗い流す。気持ちがいい。-

水曜日に友だちが来て、
-遥か遠方より友来たる。
 久しぶりに人間との会話ができた。
 泊まってもらった。
木曜日は送っていった。
-また、一人暮らしが始まる。寂しいな‥‥。-

金曜日は糸巻きもせず、
-午前中は近くの湖で釣り。
 午後はじっくり本を読んだ。-
土曜日はおしゃべりばかり。
-と言っても、愛犬相手のおしゃべりだ。-

友だちよこれが私の
-寂しい年金暮らしじゃよ。-
一週間の仕事です。
-仕事とは呼べない生活だ‥‥。-

テュラ テュラ テュラ テュラ テュラ テュララ
テュラ テュラ テュラ テュ ラ~ラ~

こんな生き方、あってもいいかな?

by don-viajero | 2009-09-17 21:24 | 超短編小説 | Comments(0)
2009年 08月 10日

『珍説・桃太郎』

昔、昔、あるところにたいそう金持ちの家庭で、
何不自由なく育った桃太郎という者がいた。

一方、そのころ鬼ヶ島に拠点を構え、
青鬼のユキオ、赤鬼のイチロウを首領として、
金持ちから金品を盗り上げては、
下々の貧しい者たちに、その金品をばら撒くという
義賊団が勢力を伸ばしていた。

桃太郎は供を連れ、逆に彼らの金品を
奪い取ろうとさもしい企みを抱いていた。

決戦を控えた朝、鬼ヶ島を対岸に見据え、
話し下手の桃太郎は幇間の猿・ノブテル、
キャンキャン騒がしい犬のヒロユキ、
ケ~ンケ~ンとご主人様のオウンゴールを空から
見張っていたキジのタケオを前にして、
檄文を読み始めた。

「我が可愛い僕たち!金持ちというものは
 あくまでも踏襲(ふしゅう)しなければならない!
 近頃、頻繁(はんざつ)にその金持ちから
 盗みを働く輩がいる。
 これは、未曾有(みぞうゆう)の事件であり、
 適切な措置(しょち)をしなければ、
 世界が破綻(はじょう)してしまい、
 実体経済(じつぶつけいざい)がおかしくなる!
 すでに彼らの行為で世の中は低迷(ていまい)しておる。
 詳細(ようさい)は昨晩、説明した通りだ!
 彼らを打ち破ることは焦眉(しゅうび)の急である。
 この戦い、順風満帆(じゅんぽうまんぽ)で
 完遂(かんつい) しようではないか!
 皆の者!怪我(かいが)をせず、傷跡(しょうせき)を
 残さぬよう、しっかり働いてくれたまえ!!!
 エイ! エイ! オー!!!」

供の者たちは、いつしかどこかへ消え去ってしまい、
一人空しく、桃太郎のしゃがれた声だけが
波間に響いていた‥‥。
 

by don-viajero | 2009-08-10 12:35 | 超短編小説 | Comments(2)
2009年 08月 09日

『派遣教師』

私は派遣教師。

今日は忙しい一日になりそうだ。
出張授業であちこち回らなければならない。
たくさんの資料を抱え、
朝食抜きで、慌てて出かけた。

始めに訪問したのは「メダカの学校」。
川のなかをそっと覗いてみたら、
メダカさんたちはみんなでお遊戯していた。
持ってきたお遊戯帳は必要なくなったみたいだ。

次に訪れたのは「スズメの学校」。
先に来ていた先生がムチを振り振り、チイパッパ。
生徒のスズメは輪になってお口をそろえて、チイパッパ。
これだけ厳しく教えていれば私の出番はない。
音楽帳もいらなくなった。

最後に行ったのが「げんこつやま」。
持ってきた資料も少なくなり、
お腹も満たしてきたので、楽チンで登れた。

子だぬきさんたちに、おっぱいを飲ませてあげたら、
寝てしまい、起きたら、抱っこしておんぶして
また明日!メェ~!!!

by don-viajero | 2009-08-09 09:18 | 超短編小説 | Comments(0)
2009年 07月 22日

超短編小説 『野球少年』

「こんにちは!」
元気な声が響き、玄関を開けると、野球帽を被った、
この辺りでは見かけない少年が立っていた。

「お父さんが、これをおじさんちに持っていってくれって!」
「なにかな?」
宛先も差出人も書かれていない封書を渡された。
「それじゃぁ、僕、ちゃんと渡したヨ!帰るネ!」
「チョット‥、待って!君のお父さんって‥?」
少年はあっという間に走り去ってしまった。
その後ろ姿に見覚えが‥‥。

真っ白な封書を開けてみた。
それは遥か昔、少年野球に没頭していたころの
私が書いた『僕の夢』という題の作文だった。
-大きくなったら長島さんや王さんのような
 野球選手になる!‥‥-

高校時代、甲子園を目指してやっていた野球。
三年の春、練習試合で致命的な怪我をしてしまい、
悔しい思いのまま、スタンドから喉を嗄(か)らして
応援したチームメイトの活躍。地区の決勝戦で敗れ去った。

しばらくして、再び玄関のチャイムが鳴った。
「ごめんください‥‥。」
頭のなかが混乱したまま、戸を開けると、
白髪に長く伸びた白髭の老人が所在無く立っていた。
「どちらさまですか?」
「あ、そうそう、貴方に一言言いたくて‥‥。」
「なにをですか‥‥?」
「迷いを捨てなさい!それだけです!」
そう言い残し、踵を返し帰って行った。

私は決心した。この数週間悩み続けていた、
少年野球の監督を引き受けることを‥‥。

by don-viajero | 2009-07-22 20:04 | 超短編小説 | Comments(0)
2009年 06月 23日

超短編小説 『同業者』

ゆっくりドアのノブを回してみた。
-あれ?開いている???-

懐中電灯の心細い明かりだけが
揺れるリビングまで、
そう~っと足を運び電気のスイッチを押した。

「ヒッ!」
そこには、包丁を握り締めた男が、
まるで、鳩が豆鉄砲でも食らったような
顔をして立っていた。
「あっ!泥棒だ!」

男は震える両手に包丁を構え、
「か‥金・を・だ・せ!」
「お前さん!なにをそんなに震えているんだ!
 入り込んだ家を間違えたみたいだな!」
「な‥なんだとぉ!」
「俺は現役の刑事(デカ)だし、
 ほれ!そこの賞状やトロフィーを見ろ!
 そんな包丁一本だけで、
 柔道六段を相手にするのか?」
「ヒェ~!!!か‥勘弁してください!
 未遂ですし‥アワワワワワ‥‥。」
と言い終えるが早いか、
男はすばやく走って出て行った。

-まったく、最近のコソ泥は下調べもしないで、
 いきなり忍び込むから困ったもんだよ!-
そう呟きながら金庫のダイヤルを回し始めた。

by don-viajero | 2009-06-23 20:19 | 超短編小説 | Comments(1)
2009年 06月 21日

超短編小説 『おくりびと』

私が5歳にとき、
父が祭りの夜店で買ってくれた亀の「亀吉」。

その父も一昨年、逝った。
父のあとを追うように昨年、母も逝った。
そんな二人を見送った亀吉が
昨日、死んだ。
おそらく大往生なんだろう。
みんなに可愛がられた。

亀吉が我が家に来たときの私と
同い年になった孫娘と一緒に、
頑丈なダンボール箱に入れ、
庭の隅に埋めた。小さなお葬式だ。

「おじいちゃん、死んだ亀吉はどうなるの?」
「そうさなぁ‥‥。
 天国ってとこで楽しく暮らすんじゃないかな?
「ふぅ~ん。」

孫娘は小さな手を合わせ、
「無事、亀吉が天国に行けますように‥‥。」

翌日、孫娘にこう言われてしまった。
「おじいちゃん、亀吉のお墓を掘り返してもいい?」
「どうしてだい?」
「だって、亀吉が無事天国に行ったか確かめたいの!」

by don-viajero | 2009-06-21 06:51 | 超短編小説 | Comments(0)
2009年 05月 14日

超短編パロディ小説 『バイリンガル』

麻生さんの奥さんが猫のタマを抱いて
散歩をしていたときです。

向こうからやってきたご近所の
小泉さんの奥さんに声をかけられました。
「お宅の太郎君、大学卒業して早々にアメリカ赴任ですってね!
 英語は結構喋れるんですか?」
「えぇ、学生時代イギリス留学していましたから‥‥。」
「そう言えば、奥様もお若いころ、
 アメリカにいらしたんですよね!今でも喋れますか?」
「まぁ、少しぐらいの会話でしたら‥‥。」
「あっ、そうそう、旦那さんも長いこと
 ドイツにお勤めしていてドイツ語が堪能でしたわよね!
 お宅は家族揃ってバイリンガルなんですね!
 羨ましいわ!」
「それほどでもありませんことよ!ホッホッホッ!
 さぁ、タマ、おうちへ帰りましょう!」
そう言うと、麻生さんの奥さんに抱かれていた猫が、
「ワン!」と吼えた。

麻生さんの奥さんが立ち去った後、
呆気にとられていた小泉さんの奥さんは、
鴻池の奥さんとバッタリ!
「ねぇ、ねぇ!鴻池の奥様!麻生さんのお宅って、
 皆さんバイリンガルなんですってよ!」
「でもねぇ~、小泉さんの奥様!ここだけの話!
 あの方たちって中学漢字が読めないんですってよ!」
 いやぁねぇ~!」
「そう言えば、最近お宅の旦那さんが元気に熱海へ行ったのに、
 入院したんだって言ってましたわよ!」
「あの方たち、日本語までもバイリンガルされるんですわね!」
「‥‥???}

by don-viajero | 2009-05-14 21:21 | 超短編小説 | Comments(2)
2009年 04月 25日

超短編パロディ小説 『みの虫国物語』

あるところに『みの虫』の国がありました。
以前は平和で何も争いごともなかったのに、
ヨタロウ虫たちとヤイチロウ虫たちが、
国を二分していがみ合うようになってしまいました。
それというのも、どうやらヨタロウ虫の仲間のなかに、
強力な権力を握ったウルシ虫が現れたからです。
漆の毒で気に入らない虫たちを次から次へと、
問答無用にやっつけていくのでした。

そのころ、テレビではモンタという電波芸者虫が大活躍。
まるでヨタロウ虫たちの喋る広告塔のようでもあった。
しかも、彼はとりわけ『みの虫国』の中年女虫たちに、
それは、それは人気がありました。
モンタはテレビでいつもヤイチロウ虫の大沢虫は
「悪い虫だ!悪い虫だ!」と言っておりました。

ある日のこと、大沢虫の幇間(ほうかん=太鼓持ち)
である小久保虫が逮捕されてしまいました。
内緒で甘い蜜を吸っていたからでした。
そんなことは、どの虫たちも隠れて、そっとやっていることなのに、
いきなり逮捕されたのです。

さて、裁判が始まりました。
つい最近、裁判員制度を導入した『みの虫国』では、
裁判員にモンタとおばちゃん虫四匹が選ばれました。
実はおばちゃん虫たちはモンタの大ファンだったのです。
いままでなら罰金程度で済んだはずなのに、
小久保虫は禁固一年の実刑判決が下されました。

モンタとおばちゃん虫たちは大喜びしました。
そして、ウルシ虫は益々強大な権力を握り、
『みの虫国』大統領より偉くなってしまったのでした。

はたして、以前のような平和で穏やかな
『みの虫国』はいつ訪れるのでしょうか‥‥。

by don-viajero | 2009-04-25 20:20 | 超短編小説 | Comments(2)
2009年 04月 20日

超短編パロディ小説 『ぐりとぐら』

青い帽子のぐりと赤い帽子のぐら。
仲良し野ねずみの童話‥‥ではありません!

-グリ グリ グリ-
ゲンコツの突き出た中指、第二間接が脳天を押さえる。
可愛い孫を虐めていた少年は半泣きだ。
「だったら、もう年下の子を虐めちゃいかんぞ!」
「わかったよ~!エ~ン エ~ン」

-グラ グラ グラ-
背後からきた少年の父親に殴られた!
そのまま二人は去ってゆく。

-グラ グラ グラ-
殴られた頬に手を当てながら、
「歯!歯が抜けそうだぁ!」
「大変だぁ~!
 おじいちゃんの少なくなった歯が抜けちゃうよ~!」

-グラ グラ グラ-
「おじいちゃん!ボクの歯も抜けそうだよぉ~!」
「おまえはいいんだ。新しい歯が生えてくるんだからな!」

-グリ グリ グリ-
「おじいちゃん!新しい歯が生えてきたよ!
 僕の抜けた歯、おじいちゃんにあげるよ!」

-グラ~リ グラ~リ グラ~リ-
「ありがとよ!
 感激で頭がグラグラしてきたよ!」

仲良しおじいちゃんとその孫のお話でした‥‥。

by don-viajero | 2009-04-20 20:22 | 超短編小説 | Comments(0)