陽気なイエスタデイ

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カテゴリ:本( 73 )


2012年 09月 02日

無頼(ぶらい)

「坂口安吾」が“聖なる無頼”(村上護著)ならば、おそらくf0140209_1954026.jpg
「中上健次」は“最後の無頼”を通した、本物の作家なのかも
しれない。

被差別部落民として育った作家の言葉には、業の深さや過酷さを
余すところなく、ビシビシと響かせてくるものがある。

ひょっとしたら、“無頼”という称号が本来の作家の姿であり、
年金の仕組みすら知らない、軽薄などこかの元知事と一緒に
なって、興味本位な三文判記事のコメンティターや、中途半端な
大名旅行の雑文をご大層に書き散らす当世の物書きに「作家」の
称号を与えたくなくなるような気さえしてくる。

ちょうど「高橋和巳」を数冊読み終えたころだった。二十歳代
後半から三十歳代前半にかけて、氏の小説を次々と読んだ。
短編の「19歳の地図」「蛇淫」「化粧」「水の女」、長編「枯木灘」、
随筆「鳥のように獣のように」etc‥‥。心を揺さぶるものが
あったことだけは確かだ。だからこそ、一冊で終わらず、次々と
手にしたのだった。

中上健次の本は正直難しい。というよりも、当時の私に氏の小説を
噛み砕く読解力が足りなかったことも事実である。40歳を過ぎた
あたりから少しずつ読み返している‥‥。そして新しい発見がある。
人はそれぞれに好き嫌いがあるし、また耳にする音楽のフィーリングが
合う、合わないがあるかもしれないが、試しに一冊読んでみてもいいの
ではないだろうか?もしかしたら“最後の無頼”の意味することが
理解されるかもしれない‥‥。

中上健次の本の1ページを捲ってから数十年の星霜が過ぎ去った‥‥。
久しぶりに氏に関する新たな本を手にする機会に恵まれた。

「エレクトラ」高山文彦著。中上健次の評伝だ。それは彼の自宅の
火災で焼失してしまった作品のタイトルでもあったらしい。

by don-viajero | 2012-09-02 19:08 | | Comments(0)
2012年 08月 15日

ブレイブ・ストーリー

Brave=勇気
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二階の東に面したベランダに置いてあるバケットチェアーに
もたれ掛かり、ページを開く。立秋を境に空に浮かぶ雲は、
綿菓子のようにポワンポワンと遊び、田んぼを渡ってくる
渇いた空気が、さわさわと出穂(しゅっすい)の始まった
稲穂を震わす風の音を拾い聞きながら、至福の時間を過ごす。

3ヶ月以上前から購入してあった格安のアマゾン・ユーズド本、
宮部みゆき「ブレイブ・ストーリー上卷・中巻・下巻」三部
構成の文庫本を一気に読み終えた。
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現世(うつしよ)で、突然自分の身に降りかかった悲しい
運命を変えたいと願う、不器用な小学5年生の亘(ワタル)
少年が、建築途中で放置されたビルの階段に現れた“要御扉”
(かなめのみとびら)”から入り込んだ幻界(ヴィジョン)での
大冒険だ。旅の道連れとなる大きなトカゲに似た水人族の
キ・キーマや猫人間・ネ族の女の子ミーナ、ドラゴンのジョゾ。
様々な町や村での特殊な種族との出会いや出来事。それは
まるで“ネバーエンディングストーリー”のような世界へと導く、
宮部みゆきのファンタジーワールドである。
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昨今耳目する“勝ち組”“負け組”といった篩い分け。まったく
厭な表現だ。
ほんとうの勝ちとは‥‥?何が勝ちで、何が負けなのか、すべての
最後に答えが用意されている。

この本は、これからページを開くであろう小学生や中学生
ばかりでなく、大の大人でさえ“Brave”を与えられることに
なるだろう。 

                  

by don-viajero | 2012-08-15 10:54 | | Comments(4)
2012年 07月 04日

大人になる前

大人になる前‥‥。それは、ほんの些細なことでも“大人”と
張り合うようになってきた、微妙な距離感のある青春時代より、
もっと遡ることを意味している。

本の世界では、きよし少年を通しての重松清作品を数多く
読んできた‥‥つもりだ。でも、それはあくまで少年の目から
見た世界であり、私には、もう一方の少女たちの視線で見る
ことも、想像することも無理なことである。

ここひと月で「森 絵都(もり えと)」の作品を三冊立て続けに
読んだ。

一冊目は「永遠の出口」。小学三年から高校三年までの、多感な
一人の少女を描いた作品だ。
二冊目は「宇宙のみなしご」。私にも覚えがある。友だちの家の
屋根に一緒に上って見た夕焼け。その屋根の上で立ち上がって、
どちらが遠くに飛ばせるか描いた放物線。こんなこと、大人に
なってからはできないことだ。
三冊目は2006年直木賞受賞作品の「風に舞いあがるビニールシート」。
どちらかというと、児童文学を得意としてきたらしい筆者が、
懸命に何かを求めて生きる“大人”の物語を描いた、心に響く
六つの短編集だ。

子どもには出来なくて、大人には出来ること。逆にアラカンになった
からこそ見えてきた、大人になれば出来ないこと、子どもだったから
こそ出来たこと‥‥。

先日、早朝ランの帰り道。プ~ンと匂ってきた、とってもとっても
懐かしい香り。いまの子どもたちには、見向きもされずに残っている、
大きな桑の木に実ったクロ紫色の大きなクワズミ。数粒取ってみた。
摘んだ指と手の平はあっという間に濃い紫色に染まる。口に
含んでみた。その甘酸っぱい粒々を舌で転がしながら、瞼を閉じると、
そこには唇をぶんど色に染めて、夢中で貪る少年の姿があった‥‥。   
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by don-viajero | 2012-07-04 19:53 | | Comments(0)
2012年 05月 28日

宮部みゆき

某テレビ局で『宮部みゆき・4週連続“極上”ミステリー』と
銘打って月曜日に放映しているテレビドラマがある。
そう、今宵月曜も‥‥でも観ない‥(笑)。
朝が滅法強い私は、当然の如く夜は苦手だ。どうしても、
観たいから録画する‥‥。

さて、その作品の仕上がりはというと、放映時間の制限が
あるからか『スナーク狩り』なんか、ところどころ本の
内容とはかけ離れてしまって、興醒めしてしまう。

結論としては、宮部みゆきが以前発言していたように、
彼女は映像を意識して本を書いているらしいが、映像が
その本の内容に追いつかなければ、ある意味宮部みゆき
自体が否定されてしまうのではないだろうか?
そもそも、テレビドラマはテレビに収まる範疇で脚本を
考えるのであって、映画のようなわけにはいかないのは
当然だ。だったら、そんな安易な作品しかできないテレビ枠で
流さない方がマシではないだろうか‥‥。
ここにもテレビの衰退してゆく“理由”があるのかもしれない‥‥。
そんな私の考えが杞憂に終われば良いのだが‥‥。

映像が本を超えることはないだろう‥そう私は信じて疑わない。
読書は時間に捕われる事がない。難しい箇所にぶつかれば
ゆっくり読めばいいし、読み返したってなんの不都合も生じない。
映像のように一瞬のうちに流れ去ってしまうものではないから、
まったりと楽しみながら噛み砕くことも可能だ。

映画評論家の故・水野晴郎氏‥‥ではないが、
「いやぁ、本って本当にいいもんですね」だね!

by don-viajero | 2012-05-28 19:58 | | Comments(0)
2012年 02月 09日

誰かが足りない

生きている限り、深度は違っても自分と関わりのあるf0140209_18443543.jpg
誰かを失う‥‥。それは『死』という永遠に再会することの
叶わぬものもあれば、何らかの事情で、いつの日か共に
時間を過ごした人との別れもある‥‥。

そんな失ったものへの郷愁や、本当はもっと大切な人だった
のではないかと思う気持ちを、いつまでも記憶の底に抱えて
いたところで前へは進めない。各々の想い出のなかだけで
綺麗ごととなって残っていればいいのかもしれない。
それでも、ふと立ち止まったとき誰にでもあるだろう
『誰かが足りない』。

生きていれば新しい出逢いもあるし、新たな生命(いのち)にも
巡り合える。そして彼らとの繋がりに、いままでとは少しばかり
違った人生が切り開かれてゆくことになるのだろう‥‥。

宮下奈都『誰かが足りない』。
一つ一つの物語のなかにある“誰かが足りない”。足らないことを
いつまでも哀しまず、足らないことで充たされてみる。誰もが
決して一人ではないし、希望はどこにでも見つけることができる。
それは美味しい食事を提供してくれるレストラン「ハライ」の
客となって、偶然同じ時刻に予約をし、来店するまでのそれぞれの
葛藤を描いた六篇の連作集だ。

by don-viajero | 2012-02-09 18:45 | | Comments(0)
2012年 01月 18日

芥川賞・直木賞

やはり『田中慎弥』はただの頭でっかちだった‥‥。

それは学校へは行かずとも、独学で身につけた学力は
他の追随を許さないってとこかな‥‥。

しかし、そこには笑いや悲しみの混じった学生生活も
なければ、もちろん部活動も存在しない。どんなに
すばらしく優れていても、血の通う心がない。
以前『2009年・この3冊』で紹介したが、私としては、
今回の受賞インタビューを聞き、然もありなんという
感じだった。

何度も直木賞にノミネートされてきた『伊坂幸太郎』は
昨年からノミネート自体を拒否するようになった。

ひょっとしたら、芥川賞や直木賞の受賞は、ヘボ歌手でも
ひと時代前の『紅白歌合戦』に出演することが、
一種のステータスが上がることを意味したことに似て、
長い歴史を繰り返すうちに、選考委員も含め、些か手垢の
付いたものに成り果ててしまったのではないだろうか‥‥。

by don-viajero | 2012-01-18 22:06 | | Comments(0)
2011年 12月 13日

2011年『この3冊』

一年の節々で繰り返される「あぁ、もうこんな時季かぁ‥‥」。
どんどん、その周期が早くなってきている‥‥。
さぁ、今年もやってきました『この3冊』。

今年は著者別読書数を紹介しよう。
断トツで「宮部みゆき」が11冊。「重松清」「奥田英郎」
「横山秀夫」5冊。「荻原浩」「加納朋子」「高野和明」3冊。
「伊坂幸太郎」「岡嶋二人」「百田尚樹」2冊。「小川洋子」
「道尾秀介」ほか著者多数‥‥1冊。
現在、読みかけのものが宮部みゆき、岡嶋二人、湯本香樹美。
そして、「東日本大震災」後、心ばかりでなく、すべてが暗闇に
覆われてしまったなかで読み返した「串田孫一」の4冊。

さて、本題の『この3冊』のうちの一冊は、あのときの劣悪な
精神状態にもよるが、再読本であっても私のバイブル本である
「串田孫一」の『旅の断章』であろう。
目次の最初に表記された『谺(こだま)する想念』をはじめ、
『狂乱する水音』『孤独な神の旅』『天空からの戒終』『白い芳香』
『さまよう焦点』『色と光の微動』etc‥‥。
キラキラ輝く表題、踊るように記された美しい旋律を帯びた言葉遣い。
まるでズタズタにされた心を癒すように響いてくる言葉のリズム。

二冊目は大好きな伊坂幸太郎の『マリアビートル』。
『グラスホッパー』の続編として出された、殺し屋たちの狂想曲。
「ねぇ、世の中で正しいことって何だか分かる?殺し屋のおじさん」
彼の物語は映像だね!

三冊目は高野和明『13階段』。
いわゆる『‥‥賞』であっても、結構当たり外れがあるなかにあって、
『江戸川乱歩賞』受賞作品として、特筆すべきじゃないだろうか!

「本が本を連れてくる」
そんな状態がしばらく続きそうだ‥‥(笑)。

by don-viajero | 2011-12-13 19:50 | | Comments(0)
2011年 12月 09日

『輝く夜』

クリスマス・イブの日に起こった五人の五つの物語。
百田尚樹『輝く夜』。

私はこの本を『風の中のマリア』読後、直ぐに読んでみた。
それは百田尚樹という作家を、もっと違った視点からの作品から
眺めてみたいと思ったからだ。

この五つの短い物語は、クリスマスを間近に控えた夕闇の巷を
飾るイルミネーションのように、キラキラ輝き、様々に色を変え、
充分に私を満足させるものだった。
読み進むうちにオチが解ってきても、ほっこりとした気持ちに
させてくれる。

12月24日(クリスマス・イブ)を迎えるにあたって、一夜一話の
物語を再読してみることにしよう‥‥。
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by don-viajero | 2011-12-09 21:42 | | Comments(2)
2011年 10月 19日

女優・加賀まりこ&作家・奥田英郎

過日の夜中、目が覚めたとき、付けっぱなしのラジオから
聴こえてきた野太い女の声。番組は「女優が語る・私の人生」。

以前から、あの大姉御のようなツッパリも魅力的だったし、
なんといっても、彼女の歯に衣着せぬ物言いが大好きだ。
男に変声期があるように、女性も年齢を重ねてくると、
半オクターブ下がる見本みたいな声主だ。しかも彼女の声、
前にも増して迫力さが加わったようだ。
付け加えると、故・川端康成も彼女が大のお気に入りだったらしい。

無類の本好きであり、芸能界きっての雀士でもある彼女のお薦めが、
奥田英郎『オリンピックの身代金』。私はまだこの本は読んでいない。
しかし、今年2月、立て続けに彼の著作4冊を読んだ。なかでも、
『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』は「いらっしゃ~い」と
患者を迎える、精神科医・伊良部が様々な悩みを持ち込んだ患者と
ともに繰り広げる面白話の短編集だ。伊良部の突拍子もない行動が、
はたして馬鹿なのか利口なのか、診察を度外視した名医か、
ヤブ医者なのか‥‥。
大震災前だったから‥こんな本も気楽に読めたのだが‥‥。

ちなみに、まったく関係ないのだが「加賀まりこ」は、スペイン語の
スラング「Caga maricón」(オカマが糞する)なんだよ(笑)
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by don-viajero | 2011-10-19 20:08 | | Comments(0)
2011年 10月 02日

コンビ

コンビニエンスストアーのことではない。
二人の組み合わせのことだ。

揺籃期、近所でいつも一緒に遊び、小学校でも6年間ずっと
同じクラスだった竹馬の友は、10年以上も前に早世した。
中学、高校‥‥とそれらしい友はいたが、どこで何をしているか
ぐらいは知っているが、今は音信不通だ。

漫画の世界でのコンビは、藤子不二雄があまりにも有名だが、
作家にも存在することを知らなかった。その名は『岡嶋二人』。

名前の由来は「お・か・し・な・二・人」かららしい。小学校時代、
明智小五郎が出てくる江戸川乱歩やコナン・ドイルの
シャーロック・ホームズをちょっと齧っただけで、推理物や
ミステリーは食わず嫌いなところがあった。強いて挙げれば
阿刀田高の短編物だけだろう。

しかし最近、宮部みゆきに嵌ったせいか、それら系統本に
魅せられてしまった。横山秀夫、高野和明、奥田英郎etc‥‥。
そんなとき、ちょっと読んでみようかなと注文したのが、
岡嶋二人の『そして扉が閉ざされた』。

f0140209_1842945.jpg一人娘の自殺に疑念を
抱いた富豪の母親が、
彼女が消息を絶つまで
直前の時間を共有した、
遊び友達である男二人、
女二人を10日分程の
カロリーメイトと、配管
されている水だけが供給
される地下シェルターに
閉じ込めてしまう。狭い空間で繰り広げられる脱出劇と
四人の推理による犯人探し。そんな極限状況の密室で
少しずつ謎が解明されてゆく。
しかし、結末は思わぬ方向へ‥‥。とにかく無茶苦茶面白い!

早速、もう2冊アマゾンに発注した。
残念ながらこのコンビ、すでに解消してから久しい。

さて、現在の私にとってのコンビは?
それは、付かず離れずのカミさんなのかもしれない‥‥。
もうかれこれ、30年以上の迷コンビなのだから!

by don-viajero | 2011-10-02 15:39 | | Comments(0)