陽気なイエスタデイ

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カテゴリ:夢( 57 )


2011年 09月 29日

内田先生

夢のなかで先生の授業を受けていた。
残っている頭髪を振り乱し、ツバを飛ばしながら、
熱心に授業を進めている。

『理科』という科目が好きだったし、当然よく
理解できた。だから、理解させてくれるような
教え方の先生が好きだった。

薄汚れてヨロヨロの白衣をだらしなく着込み、
赤ら顔をニコニコさせ、大机の上にビーカーや
フラスコ、試験管、アルコールランプの並んだ
各グループの実験を覗いて見て廻っている。
夢のなかではぶたれずに終わった‥‥。

教師にゲンコツの中指で脳天グリグリをされたことは
幾度となくあっても、ピンタを張られたのは初めての
経験だった。目が覚めたとき、あのときの痛みを
久しぶりに思い出した。

理科教室の空気が、瞬間冷凍されたように静まり
返った。そのとき、背後に立つ人の気配を感じた。
振り向くと目の前に、唇をワナワナ震わせた先生が
立っていた。無言のまま平手が飛んできた。
しかも、パシン!パシン!往復で‥‥。
冷凍された空気にバシっと亀裂が入り、砕け散った。
僕はしばらく呆然と立ちすくんでいた。先生は
黙したまま教壇に戻り、何事もなかったかのように
授業を再開した。

頬をぶたれた痛みは、記憶の底から掬い上げられ
ジンジンと胸の奥から沸き上がってきた‥‥。

by don-viajero | 2011-09-29 20:08 | | Comments(0)
2011年 06月 26日

銭湯

「お~い、行くぞぉ~!」
夏の夕刻は明るい。
ビシッと角帯を締め浴衣着姿の父は、カランコランと
雨で穿られた凸凹の砂利道を歩いている。ちょっと
前まで外で遊び呆けていた僕は、そんな父に
纏わりつくように、生意気に団扇で火照った体を
煽りながら付いてゆく。

開けっ放しの入口に吊るされた暖簾が、ゆらゆらと
誘うように揺れている。中からほのかに匂ってくる
石鹸の甘ったるい香り。女親分のような厳つい顔で、
いつもの番台のおばさんが「ぃっらっしゃ~い!」
一番混む時間帯だ。これから入ろうとしている者、
上がったばかりで裸の肌を赤く染めている者。
みんな見知った人たちだ。父が普段から可愛がっている、
従兄弟同士で二人の知的障害者が、賑やかに喋っている。
交通事故で片足の膝から下を失った『シンちゃん』が、
起用に義足を外しながら父に気付き、
「おいちゃん!おいちゃん!」と弾んだ声をあげる。
『シンちゃん』の姉さん『き~ねいちゃん』が、やはり
知的障害者の妹を抱え、一人で取り仕切り、出前しか
やっていない寿司屋の出前持ちだ。
ラーメン屋の出前持ち『アジャジャのかずぼ』も
「おいちゃん!坊~も一緒だね!」と寄って来る。
いつものように、繰り返される裸の付き合い。
「とうちゃん!風呂上りにアイスクリーム買ってよね!」
「あぁ、わかった!」

銭湯の向かいにある『花月堂』の入口にで~んと構えている
アイスクリームボックスを覗き込む。僕は迷うことなく
『当たり』のあるホームランアイスを握る。
舐め終えてスティックに『ホームラン』の文字があれば、
おまけにもう一本。『ヒット』の文字だったら、4本集めて
一本貰える。ゆっくり舐めながら家路につく。

‘せぎ’の近くでは、すっかり暗くなった夜道を無数の
飛び交う。畑の立派な葱坊主を一つ頂戴して、団扇で落とした
蛍を入れ、蛍提灯にする。

「ただいま~!」二階に上がり蚊帳のなかへ捕まえてきた
蛍を放つ。裸電球を消して、敷かれた掛け布団の上に座り、
蛍の軌道を眺めている。「ご飯にするよ~!」母の声が、
狭い階段の空間を駆け上がり気持ちよく響いていた。   

by don-viajero | 2011-06-26 05:08 | | Comments(2)
2011年 04月 03日

エイリアン

胃の中で数十匹のイカ型エイリアンが蠢いている。
グチャピチャ音をたてながら、胃壁をブチ破り、
体中に蔓延(はびこ)ろうとしている。まるで
往生際の悪いホタルイカの亡霊につきまとわれて
いるかのように、その度に噛み付くような刺激に
襲われる。とうとう、痛みに耐え切れず、
「ギャァ~!」
酷くうなされ、目を覚ましたときには、パジャマは
しとどに濡れ、額にも脂汗をかいていた‥‥。

数日前の朝、知人が日本海で獲れたての、しかも
でっかくて大量のホタルイカを持ってきてくれた。
昼は大根おろしで生ホタルイカ丼、夜は生姜醤油で
酒の肴として目一杯頬張って美味しく頂いた。
(カミさんは嫌いだから一匹も食べなかった‥)

それでも、胃の痛みは夢なんかじゃなく、二分から三分
間隔で激痛が襲ってくる。無言で「痛~い!」顔を歪め、
言葉を飲み込んだところで、軽くなるはずもない症状に、
なすすべもなく布団の中で、のた打ち回る。

最近は潰瘍の薬を毎日常飲しているので、胃潰瘍の
類ではない。そこで家庭薬の『赤玉はら薬』飲んでみた。
痛みはあっという間に遠ざかり、恐ろしい夢の続きを
見ることはなかった。

後日談
この症状はネットで調べたところ、ホタルイカの寄生虫・
旋尾線虫によるものと判明!
現在、水分を過多に取り、下痢を引き起こさせ、正露丸で
退治中である(笑)
生食にはくれぐれも気をつけましょう!!!

by don-viajero | 2011-04-03 11:18 | | Comments(3)
2010年 12月 20日

呼出音

真夜中、電話が鳴った。

妻が旅行に出かけ、家にいるのは私一人だけ。

階下の電話のベルか?
それとも脱いだズボンのポケットのなかの携帯か?
いずれにしても一回で切れた。

一時間ほどして、また鳴った。
やはり、どちらからの音か判別できないまま、
一回で切れた。

そして、数分も経たないうちにまた鳴った。
今回は二回で切れた。
さすがに気になって、携帯の着信履歴を覗く。
新着はなかった。

その音は、頭のなかでは着信音と認識するのだが、
我が家の固定電話のものでもなく、
自分の携帯の着信設定音でもない。

いったい何の音‥?いったい誰が‥?

朝を迎え、朝食の準備をしていると、
今度はメールの設定着信音が響いた。

「昨夜、遅くに無事、羽田に着きました。」
とディスプレイに表記されていた‥‥。

by don-viajero | 2010-12-20 19:44 | | Comments(0)
2010年 10月 16日

カトマンドゥ

朝靄のなか、通りの角の店で焼くハッシケーキの
甘い匂いと、乾燥させた牛糞を燃料に朝食を準備する
家々から立ち上る煙の匂いが、微妙に溶け合い
鼻をくすぐる。ヒンドゥの神々に花や香を手向ける人々の
なかを、牛だけがのんびりと優雅に歩いている。
幕が開けるように、白いモノトーンの世界が次第に
明るさを増し、はるか遠くに万年雪を被ったヒマラヤの
峰々の威容が浮かび上がってくる。

私は香港の女子高の教師。
数名の生徒を引き連れネパール・カトマンドゥに来ている。
もちろん、彼女たちとの会話は中国語だ。
彼女たちを連れて市場へと出かけた。

裸電球のぶら下がる薄暗く狭い路地を様々な店が軒を
連ねている。ある雑貨屋の前で、彼女たちの足が止まった。
どうやら可愛らしいグッズがあったらしい。中国語特有の
賑やかな大声が響き渡る。とりわけ生徒の一人、
アグネス・チャンはやかましい。
私は急にビールが飲みたくなり、店主に、
「Do you have a beer ?」と訊ねた。
「No !」
「Where can I buy ?」
「That shop !」
と古めかしいピッケルのぶら下った店を指差した。
私は彼女たちを残し、その店に足を向けた。

一坪ほどの空間にぎっしりと中古の登山用品を並べた店。
その奥の暗がりに初老の男が坐っている。
「Aちゃん!」
すっかり少なくなった毛髪に白いものが目立つ男は、
紛れもなく、幼馴染のAちゃんだった。
「やぁ‥‥、フンボじゃないか‥‥。」
弱々しく言い返してきた。
そのとき、突然誰かが騒いだ。
「Police ! Police ! Run away !!!」
顔を回転させ、その声を追った。
振り返ると、そこにAちゃんの姿はなかった‥‥。

by don-viajero | 2010-10-16 20:18 | | Comments(2)
2010年 10月 03日

虫の知らせ

まだ二十歳になる前、姉が結婚した。
少しばかり頼りない義兄ではあったが、
突然できた兄貴という存在に大いに喜んだ。

奇遇にも誕生日も同じ。
高校時代の一時期、山岳部に籍を置いていたという
彼からウッドシャフトのピッケルを貰い受けた。
それは、シモンのものを買うまで愛用していた。

亡き親父の還暦祝いの席で、隣りに坐って以来、
ずいぶん長いこと、じっくり話したことがない。

夫婦のことだから詳細は解らないが、数十年前、
二人は離婚した。
それからというもの、ほとんど逢ったこともないし、
もちろん、言葉を交わしたこともない。
話題に載ることさえなかった。

過日、そんな義兄の夢を見た。
歩きながら、とりとめのない話をいっぱいした。

翌日、義兄の母の死を知らされた‥‥。

by don-viajero | 2010-10-03 19:27 | | Comments(0)
2010年 08月 02日

奇妙な物語

最近、夢を見なくなった。
否、見ていたとしてもそれが目覚めたとき、
記憶として残っていないだけかもしれない。

例えば、空を飛ぶ夢をよく見る。
それは毎回違うバリエーションがあり、
そこに登場する人物がどういうシステムで
キャスティングされるのかも解らない。

昔の恋人(妻も含めて‥‥)の夢の余韻を
記憶の隅に探そうとしていることもある。

浅い眠りか、深い眠りか定かでなくとも、
いったいどういった潜在意識が作用するのか、
眠りのなかで展開される奇妙な物語。
それが「夢」なのだろうが‥‥。
今朝、久しぶりに記憶に残る夢を見た。
しかも奇妙な夢を‥‥。

-行き倒れの男を助けた。

 体力を回復したのにも拘わらず、その男は
 家から立ち去ろうとしなかった。

 ある夜、用をたしに階下へ降りると、
 妻とその男が口づけをしていた。
 「出て行け!お前も男と一緒に出て行け!」
 大声で罵倒した。

 夢のなかでその夢を反芻する。

 女は妻ではなく、母であり、
 大声を張り上げたのは亡き父だった。

 そして、その男は‥‥。-

by don-viajero | 2010-08-02 19:28 | | Comments(0)
2010年 05月 06日

お金

その地上53階建てのビルができたころは、最上階にある
展望フロアーに一度は上がって、東京の夜景を見ようと
思っている人々で一杯だった。いまでは新たにできた隣接する
80階建てのビルに人々の関心は移ってしまい、物見遊山で
そのビルに入る者はわずかだ。
途中、51階、52階にあるレストラン街に停まるだけの
直通エレベーター内には私一人しかいなかった。

密室の壁に張られた広告類から視線を滑らせ、足元を見た。
100円玉が一つ転がっている。腰を屈めそれを拾い上げ、
そのままの姿勢で辺りを見回す。
-あった!あった!‥‥!-
開閉口のわずかに窪んだ場所に、100円玉や500円玉が
あるわ!あるわ!
気がつけば、ズボンの両ポッケが膨れ上がっていた。

まだまだあるコインを拾い上げる前に51階で
-チ~ン-と音がして、扉がす~っと開いた。
ピカピカの長靴を履いた禿げ頭に腹の出たおっちゃんと、
厚手の膝掛け毛布を煽った車椅子のおばちゃんがいた。

「おっ!ちょうどえぇ!兄さん!頼みがあるんや!」
「???えっ!‥頼みって何ですか‥?」
「ワテなぁ、腹減って、腹減ってもう倒れそうなんや!
 ほいでな、ワテはすぐにでもなんか食べたいんや!
 兄さん、展望フロアーまで行くんやろう?
 ほな、ワテのカミさん連れてってくれへんか?」
一方的に喋り捲る大阪弁に気圧され、
「そんなことなら、構いませんが‥。」
「ほな、決まった!頼むでぇ!」
目を落とせば、静かに笑みを浮かべた温和そうな夫人が、
「よろしくお願いします!」と言って、ペコリと頭を下げた。

51階から53階までゆっくりと上昇するエレベーター内で、
その夫人がゆさゆさと膝掛けの毛布を揺らしていた。
53階の扉が開く。車椅子を押して出ようとする足元には、
今度は、夏目漱石やら福沢諭吉の札が無数に落ちていた。

*「お金を拾う」夢判断‥新しい愛を求めている表れ。
 だそうです。そんなに愛に飢えてはいないんですがねぇ‥。
 若いころは、鉄棒の下の砂場にコインがザクザクある
 夢をよくみたんですが‥‥。

by don-viajero | 2010-05-06 20:07 | | Comments(0)
2010年 03月 21日

シャングリ・ラ

セスナ機を操縦しているのは、最近、ちょくちょく
話をするようになった古くからの知人だ。
機は、なだらかな尾根上をスレスレに旋回しながら、
私は後部座席の窓を開け、下を覗き、彼の説明を
逐一聞いている。

疎らな人家が途切れ、そこだけ不思議とポッカリ
霧が開いている広い盆地状にある、一本の滑走路に
降り立った。
まったく、人の気配がない山肌に備えられた二基の
エレベーター。セスナ機から降りた私たちは、
その前に立ち止まる。訳の解らぬまま、彼に訊ねた。
「これからどうするの?」
「私は、ある村の寺に行って出家するつもりだ。
 だから、ここで君とは別れる。
 私は右。君は左へ乗りなさい。」
「左はどこへ行くの?」
「それは、着いてからのお・た・の・し・み!
 それじゃぁ、元気でな!」
「???‥さようなら‥‥。」

そのエレベーターは落下する水力で上昇していった。
扉が開くと、目の前のカウンターには受付嬢がいた。
「ようこそ!‥いらっしゃいませ!」
「ここは‥‥、どこ?」
「理想郷『シャングリ・ラ』ですよ!」
下界とは隔絶されたテーブルマウンテン上には、
小洒落た低層店舗や家々が立ち並び、擦れ違う人々は
皆ニコニコしている。白人や黒人、黄色人種まで‥‥。
世界中から集まったような‥‥。

私はポケットから携帯電話を取り出した。「圏外」表示だった。
再び、受付に戻り電話をしたい旨を伝えた。
「ここでは、どこへも連絡の手段がありません!」
「じゃぁ、エレベーターに乗って降りるよ!」
「いえ、それは不可能です!」
「何故?」
「あれは‥。昇り専用となっております!
 しばらく、ここで暮らせばすべてを忘れ、
 来たことを感謝することでしょう!」

*世界遺産・ギアナ高地(3/7放送)を観た夜の夢だった。
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by don-viajero | 2010-03-21 16:38 | | Comments(0)
2010年 03月 18日

同窓会

土手には、満開の桜並木が競うように大ぶりの花びらを
咲き誇り、目の前に広がる河川敷には、整備され、
緑が眩いサッカーコートやパターゴルフ場、野球グランド。
そして、青空に映えて、満々と透き通った水を湛えた
50mの温水プール。

土手から一段下がった場所には、立派な炊事場が並び、
ムンムンとむせ返るような新緑の匂いがする芝の上には、
色鮮やかなテントやブルーシートが敷かれている。
その周りを大勢の友らが和気藹々と談笑している。

今日は中学卒業以来、初めての同窓会。
しかも野外とは!役員も粋なことをやるじゃないか!
そこには、三年間一度も替わらなかったクラスの同級会や、
それぞれの出身小学校の同級会も絡み、いささかややこしい。

懐かしい顔、顔、顔‥‥。
歳相応の顔もあれば、最終の記憶のままの顔もある。
なかにはモザイクまでかかった顔まである。
それでも、声だけは確かな記憶がある。

日中の気温はグングン上昇し、サッカーや野球、ゴルフに
興じていた者たちは、その緩んでプクプクしてしまった体形を
隠すように、Tシャツのまま次々とプールに飛び込む。
禿げ上がってしまった頭や、白髪の混じった男どもに比べ、
女性たちは髪も染め、誰もが若々しく、楽しそうに会話に
花を咲かせている。

私はかつてのように、自分のクラスはそっちのけで、
それぞれのクラスを渡り歩き、語り合い、注がれた
生ビールを旨そうに飲み干す。

真夏のような暑さに誘われ、やおら、シャツを脱ぎ捨て、
プールに向かって走り出す。
私の鍛えられた身体は衆目の的だった。一気に往復泳ぎ切り、
みんなのなかに戻った私は、すっかり、同窓会の主役に
なってしまっていた‥‥。

by don-viajero | 2010-03-18 19:55 | | Comments(0)