陽気なイエスタデイ

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2008年 05月 30日

れんげ草

ワンス・アポン・ア・タイム‥‥。

かつて、どこの田んぼもれんげで覆われていた。
甘い香りが漂うピンクと緑一面の絨毯は、
それを知っている世代、誰のこころにも残っている
懐かしい光景であろう。

寒さも去った4月から6月にかけて
れんげの田は子供たちの格好の遊び場だった。
その上に寝転んで遊んだり、人数がそろえば草野球もした。
整備された公園やグランドなんか必要なかった。

現在(いま)、小さな田んぼを借りて
仲間たちともち米を作っている。
手植え、鎌での稲刈り、はぜがけ、足踏み脱穀。
そして暮れには餅つき。
傍(はた)から見れば開発途上国並みの作業だ。
各作業後の一杯が楽しみのひとつでもある。

来年、この仲間でもう少し広い田んぼを借り、
れんげ米を作ろうという話になった。
収穫はネットでも販売しようということにもなった。

田起こしの前に、蜜を求めて飛び交う蝶や蜂たちと
思いっきりれんげの上を転げまわろう。

ワンス・アポン・ア・タイムに帰って‥‥。f0140209_20493216.jpg

by don-viajero | 2008-05-30 20:02 | ずくの会(米作り) | Comments(0)
2008年 05月 27日

ヨーグルト

秘かに応援していたブルガリア出身・琴欧洲が、漸く
優勝した。久しぶりに彼のはにかんだ笑顔がはじけた
場所だった。

7年ぐらい前だろうか?
ある人からカスピ海ヨーグルトをもらった。これが
すっかり嵌(はま)った。私の身体に実に素直に
嵌ったのだ。それ以前、胃腸の調子があまり
よくなかったのだが、驚くほどよくなった。いまでも
種を絶やさず作り続けている。

このことがきっかけで、そのヨーグルトの故郷、
グルジアを含めコーカサスの国々を訪れて
みたくなった。しかし、長引くチェチェン紛争の最中、
渡航は無理と判断し、行き先をブルガリアにした。

5年前、スイス・チューリッヒを経由してソフィアに入った。
ヨーグルト料理を率先して食べた。どれも口に合う
美味しさだった。もっとも、よく冷えた中ジョッキの
生ビールが60円弱とくれば、どんな料理も旨いに
決まっている。

そして、1187年~1397年に第二次ブルガリア帝国の
首都として栄えた古都・ヴェルコタルノヴォを訪ねた。
いまでは、人口7万人弱のこの小さな街が、琴欧洲の
故郷である。

この街のスーパーで、手のひらに乗るぐらいの素焼きの
瓶(かめ)に入ったヨーグルト(ブルガリア語でキセロ・
ムリャコ)を見つけた。それをフィルムケースに入れ、
無事成田を素通りしたのだった。

その少ばかり酸っぱい種は、冷凍室奥深く眠っている。
また気が向いたときにでも“スネジャンカ”でも作ってみよう。
あのはにかんだ笑顔と、中世のヨーロッパのたたずまいを
残すタルノヴォの街を想い出しながら‥‥。

スネジャンカ‥刻んだキュウリやクルミをクリーム状の
        ヨーグルトであえたサラダ。
        ニンニクを少し利かしてある。
        名前は「白雪姫」の意。
          
       

by don-viajero | 2008-05-27 20:22 | ◆旅/全般◆ | Comments(0)
2008年 05月 23日

恋文

今日、5月23日は語呂合わせで
「こい・ぶ・み」の日だそうだ。
所謂「ラブレター」。

私が「恋」をしていた時代には、
今のような携帯電話やパソコンなんかはなかった。
通信手段は固定電話か封書もしくは葉書だった。

そのため文字を認めて送ったものが「恋文」。

現代(いま)の若い人たちはこの「恋文」の表現を
メールだけで行っているのだろうか?
それともそんなまどろっこしい行為そのものが
失われてしまっているのかもしれない。

親も携帯メールに夢中になっている世代。
その子供たちの携帯が話題になっている昨今である。

いくら子供といえども、一度手にしたものを
そうそう容易(たやす)く手放させることはできまい。
それは共産主義・一党独裁国家「中国」が市場経済を
取り入れた以上、後戻りできない状態になって
しまったのと同じだ。

功罪を問われる子供の携帯電話。
機能制限なものをメーカーに開発してもらうか、
家族でルールを決めて持たすか。
いずれにしても親は悩みの種であろう。

遥か古(いにしえ)からの相聞歌(そうもんか)とはいかなくとも、
「恋文」をやりとりしていた時代に生きていた私は、
幸せ者だったかもしれない‥‥。

by don-viajero | 2008-05-23 19:00 | エッセー | Comments(2)
2008年 05月 16日

超短編小説 『桜』

ほころび始めたなかを歩いた。
満開のなかも歩いた。
そして、花散らしのなかをも歩いた。

はるかたっぷりと雪の残るアルプスを背に、
清らかな雪解けの水を、満々と湛(たた)えて流れる
川沿いの桜並木を、毎年妻と歩いた。

「こうして二人で歩くのも今年が最後ね‥。」
弱々しく妻がつぶやいた。
「来年のことは誰にだってわからないさ!」
妻は末期の乳がんに侵されていた。

土手の両脇に植えられた大きな桜並木が、
葉に覆われ、すっかり緑のトンネルになったころ逝った。

今年は一人で歩いている。

先を行く人込みのなかに、妻の後ろ姿を見つけた。
去年着ていた着物。

足早に近づいた。そっと妻の名を呼んだ。
振り向いたのは義妹だった。

生前、形見でもらったとのこと。
そのとき、頬に強い風を感じた。
目の前を花吹雪が舞う。

あとは渺々(びょうびょう)たる花の白い乱れである。

by don-viajero | 2008-05-16 20:53 | 超短編小説 | Comments(4)
2008年 05月 14日

赤松

生きている間、人にはそれぞれの人生がある。
誰しも不幸な出来事よりも楽しい時間を
たっぷりと持ちたいことであろう。

しかし、その存在故にある身内の不幸は避けられない。
我が身に何もなければ、否が応でも親を看取ることになる。

我が家の玄関先にスックと立っていた赤松の大木が
この春、完全に枯れた。
昨年の秋以来てっぺんの枝が次々と枯れ始めていた。
その実りの秋。
その大木は周囲のものより、
あまりにも多くの松ぼっくりを付けていた。

友らの手を借り、GWの休みを利用して伐採した。
年輪を数えると50年以上のものであった。

親は逝っても、私の子も孫もあとに続く。
私がこの地に居を構えるより先に根を張った
あの赤松も最後の力を振り絞って、
子孫を残すためにたくさんの松ぼっくりを付けたのであろう。

by don-viajero | 2008-05-14 21:18 | エッセー | Comments(0)
2008年 05月 10日

GW

GW最後の6日に私用で山葵田近くに行った。

快濶な五月の陽光に照らされた安曇野は、水の張られた田園の海に
まだ多くの雪を抱く北アルプスの雄大なパノラマが映し出されていた。
真正面の常念坊の雪形を現した常念岳から南に延びる蝶ヶ岳の稜線。
北は白馬三山までくっきりと見渡すことができた。
とりわけこの時期、鹿島槍ヶ岳の北股本谷の雪渓を凝視するのが常である。

山岳同人「餓鬼」を結成した年の1975年から79年まで、
毎年、西俣出合上部に「鹿島槍南壁合宿」と銘打ってBCを構えた。
少ないときで三人。多い年で十人。このときにはテントを三張り設けた。

積雪期における鹿島槍南斜面周辺はバリエーションルートがいくつもある。
布引東尾根、鎌尾根、東尾根、そして北峰へと続くダイレクト尾根。
このうちダイレクト尾根は75年4月初旬、S氏と挑んだのだが途中で断念。
その後数回の合宿の際計画したのだが、天候不順等で登れないままに
なっていた。

79年「餓鬼」最後の合宿となったGW.
Y氏と二人だけが都合がつき、天候にも恵まれようやく完登できた。

この毎年の合宿でなんといっても圧巻は登頂後南峰、北峰のコルから
北股本谷を滑り降りることだった。
グリセードに尻セード。あっという間にBCに辿り着く。
まるでヨダレを垂らしながら奇声を上げて、次々と滑り降りる。
まさに谷底に向かって滑り落ちるといってもよい光景だ。

あの山を見ているときは身震いさえ起こす。
-なんて無茶なことをしたものか!-と。
それでも75年、S氏とで下って安全なことは実証済みだった。
誰一人として尻込みするような者はいなかった。

あの豪快な雪渓の遊びは、私を含め「餓鬼」の仲間たちには
痛快な思い出として残っていることであろう。

by don-viajero | 2008-05-10 20:59 | | Comments(0)
2008年 05月 02日

超短編小説 『お礼』

山間(やまあい)の残り少ないたっぷりと注ぐ陽を浴びながら、
暖かな縁側で繕い物をしていた。

「やぁ!ばあちゃん!
 今年ももうじき白いものが降って来るねぇ!」
「おぉ!じいさん!元気だったかい?
 最近、ちっとも姿を見なかったから心配してたところだよ!」
「そうなんだよ!オレも群れから追い出され天涯孤独。
 爺様に先立たれたばあちゃんと同じ。
 あっちへ行ったりこっちへ来たり気楽なもんさ!
 ホラ!いつも畑の残り物を頂戴しているお礼だ!」
そう言って年老いた猿は縁側に投げた。
「すまねぇな!オラの畑は一人では食いきれねぇほどの
 収穫があるから、お前さまの好きにしてくれ!」
「ありがとよ!じゃぁまた来るよ!」

-カァ!-
甲高いカラスの鳴き声で目を覚ました。
どうやらウトウトしてしまったらしい。

傍らには大きな松茸が一本転がっていた。

by don-viajero | 2008-05-02 20:45 | 超短編小説 | Comments(0)