陽気なイエスタデイ

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2008年 07月 29日

文月

陰暦七月は七夕につるす文などを書くことから
文披(ひら)き月を略してふみづきという。

今月はすっかり文月、創作月になってしまった。
我ながら面白いものもあったと思うし、
なかにはつまらいなものもあったかもしれない。
締めは‥‥。

超短編小説 『蝉』
-カネ カネ カネ ‥ ‥-
「まったく朝から五月蝿いぞ!ヒグラシってやつは!
 金(かね)、金、金!そんなに金が欲しいのか!
 欲しいよなぁ!けどよ、この不景気お前らにそう騒がれると
 いっそう落ち込んでしまうんだよなぁ!
 そんでもってよぉ、夕方また金、金、金だもんな!
 毎日切ないよ!」

-ヒミ~ン ヒミ~ン ヒミ~ン ‥ ‥-
「どこまで俺をバカにするんだ!ミンミンゼミさん!
 貧民、貧民とは!」

-ジー ジー ジー ‥ ‥-
「孫にそう呼ばれるのはうれしいんだが、
 お前らアブラゼミに叫ばれてもねぇ‥‥。」

-ワシ ワシ ワシ ‥ ‥-
「昔はこんな鳴き声のセミなんかいなかったのに‥‥。
 地球温暖化か?!しかも皺、皺って聞こえるんだよなぁ!
 そうさ!クマゼミのワシは皺だらけのジージだよ!」

脳みそまでがこんがらがっちゃうよ!
だから夏ってきらいなんだ!
早く静かな秋が来ないかなぁ!!!

by don-viajero | 2008-07-29 20:32 | 超短編小説 | Comments(0)
2008年 07月 25日

深夜放送

深夜1時。
ハーブ・アルパート&ザ・ティファナブラスの
『ビタースィート・サンバ』が流れ、
ディスクジョッキーの口上が始まる。

「君が踊り、俺が歌うとき新しい時代の夜が生まれる。
 青空の代わりに夢を!太陽の代わりに音楽を!
 新しい時代の夜をリードするオールナイトニッポン!」

昨夜、いつものようにつけっぱなしのラジオ。
隠れたヒット番組・NHK『ラジオ深夜便』から、
その曲がウトウトしていた耳に飛び込んできた。

それを認識した脳みそは一気に中学生へと戻ってしまった。
団塊世代やアフターの我々世代には、
思い出がいっぱい詰まった『オールナイトニッポン』。

1960年代後半、東京オリンピックと大阪万博に挟まれた
高度成長期、真っ只中。
日替わりのジョッキーや、全国から寄せられた同世代からの
葉書の話に耳を傾けた。
特にテスト前は毎晩聞いた。いわゆるナガラ族。
静寂のなかでの徹夜より、どういう訳か勉強ははかどった。

番組のなかで流れるビートルズやローリング・ストーンズ、
数々の初めて耳にする新鮮な海外の音楽。
真摯に葉書の内容に答えるジョッキーたちの語り草は、
下劣化した昨今のテレビ番組とは違い、
我々にとって兄貴分のようにも映り、崇高でさえあった。

みんなが共通の意識を持っていた時代ではなかったろうか‥‥。

by don-viajero | 2008-07-25 20:42 | エッセー | Comments(2)
2008年 07月 20日

超短編小説 『秘薬・Ⅱ』

翌朝、庭に出るとあの木は元に戻り、何事もなかったかのように、
いつもと変わらず、しがみつくようにヒグラシが騒いでいた。

早速、近々25歳になる孫娘の誕生日祝いに、
買い置いていた素敵な洋服を箱から取り出した。
鏡に向かい老いた身体に当ててみる。
とてもじゃないが見られたものではない。

その日の夕刻、恐る恐るカプセルを飲んだ。
しばらくすると背骨がシャンとするような気がした。
鏡を覗くとそこには地味な服を着た20代の私がいた。
あの服を着てみた。さすが店員さんの見立てはすばらしい。
若返った私にもなんて似合っていることだろう!
薄化粧を施して街へと繰り出した。

ウキウキしてウィンドーショッピングをしていたときだ。
後ろから肩を軽く叩かれた。
振り向くとそこには初恋の彼そっくりな人。
すっかり、意気投合して一緒に食事をした。

どう見ても恋人同士だ。
話がはずみ、楽しい時間が矢のように過ぎ去ってゆく。
彼が盛んに腕時計に目をやる。私もその度に時間を尋ねる。
「お互い時間を気にしますね!」
さりげなくそのことに話を向けると、
「実は‥‥。」
そう言って、彼がことの次第を語り始めた。
秘薬売りが彼の亡くなった奥さんに似た老女だった。
という以外おなじようなものだった。
私たちは狐につままれたような顔を見合わせ大声で笑った。

時間が来る前に別れた。
「50年後の私たちに逢いに、明日またこの場所で
 食事をしましょう!今度は時間を気にせずに‥‥。」
そう約束して、軽やかに待ち人のいない家路へと向かった。

by don-viajero | 2008-07-20 08:59 | 超短編小説 | Comments(2)
2008年 07月 20日

超短編小説 『秘薬・Ⅰ』

夫は数年前に他界し、子供たちや孫たちもなにかと
忙しいらしく、このところちっとも顔を見せない。
つまらない毎日だが、頑丈な身体のおかげで元気に過ごしている。
その夏も、すでに陽も傾き、ヒグラシが甲高い鳴き声で騒ぎ始めていた。

-ピーンポーン-
チャイムが鳴った。
-イヤぁね~!また悪徳セールスマンかしら?-
ドアーの小さな覗き窓から窺った。
目深に被った帽子から白髪がはみ出して、ヨボヨボの背広を着た方だった。
どこか、夫に風貌が似ていたことがドアーを開けさせた。

「は~い!何の御用ですか?」
帽子をとって挨拶されて驚いた。
「あっ!」
一瞬あの人が帰ってきたのかと思ったぐらいだ。
「私は秘薬売りです。」
「な、なんですか?その秘薬って?」
「はい。これは6時間有効な“50年若返り薬”です。」
「嘘おっしゃい!そんなものあるわけないでしょう!」
「嘘だと思うんでしたら、お飲みにならなくて結構です。」
「だったら、それが本物かどうか証明して下さいよ!」

老人は玄関脇にある、私たち夫婦が植えた結婚記念樹の根元に、
カプセルから出したその薬を蒔き、脇にあった如雨露で水をかけた。
あら不思議!みるみるうちに植えた当時の幼木に戻ってしまい、
その木にとまっていたヒグラシが一斉に飛び去った。

「6時間もたてば元に戻ります。
 ただこれは一回きり効能がありません。
 50年前に戻ってアバンチュールを楽しんで下さい。
 たった6時間ですが‥‥。時間を大事に使って下さい。」
そう言って、一粒僅か50円のカプセルを置いていった。

カプセルを枕元に置き、床に入っても色々なことを思い描いていた。
-たった6時間か!?だったら朝飲むより夕方のほうがいいわね!
 久々に夜遊びでもしてみようかしら‥‥-
そう決断すると深い眠りに入った。

by don-viajero | 2008-07-20 08:38 | 超短編小説 | Comments(0)
2008年 07月 14日

超短編小説 『運賃』

私はタクシーの運転手。
片田舎の小さな駅の広場で客待ちをしていた。
上り下りで2時間に一本しか停車しない電車からは、
数人の見慣れた高校生が降りてくるだけ。
いつものことだ。
こんな何の取り柄もない街に、わざわざ降りる客なんかそうはいない。
だからといって、流しをしていて客なんか捕まえることは
もっと難しいことだ。

次の停車時刻まで一休みしていようと思った矢先である。
スーツをビシっと着込んだ長身で、色白ではあったが
いかにもスポーツマンといった青年が近づいてきた。

「仏崎までお願いします。」
「はい!わかりました。」
ここからその場所まで軽く一時間はかかる。
私は久しぶりの上客に浮かれ、つい饒舌になっていた。
「ところでお客さん!胸板が厚そうですが、
 なにかスポーツをおやりですか?」
「学生のころ‥‥、ボート部だったんです。」
「ほう。そうですか‥‥。で、今は‥‥?」
「まぁ、今でもボート漕ぎのようなものでよ‥‥。」
バックミラーを覗くと、その青年がスーツのポケットの
あっちこっちを探り始めている。
「すみません!どうやらサイフをどこかに落としてしまったみたいで‥‥。」
「えっ!それは困りましたなぁ!何か身分を証明するものは‥‥?」
「それならあります!」
と言って彼が身分証明書のようなものを私の肩越しから差し出したとき、
横道からダンプカーが猛スピードで突っ込んできた。
-ガッシャーン-

気がつくと霧に包まれた静かな川を手漕ぎ舟に乗っていた。
船頭さんに声をかけた。
「ここはどこですか?」
振り向いたのはあの青年だった。
「お客さん、あなたの渡り賃はいりませんから‥‥。」

by don-viajero | 2008-07-14 20:36 | 超短編小説 | Comments(0)
2008年 07月 13日

夢 『第五夜・変身』

小学校から中学、高校、大学そして今の職場まで
ずっと同い年の竹馬の友。
お互い、性格はおろかすべてを知り尽くした仲である。
そんな彼が一ヶ月前に結婚した。
なかなかの美人だ。特に唇が艶(なまめ)かしい。

ところが結婚後、彼はやけに足が速くなった。
一緒に並んで歩いても、いつも置いて行かれそうになる。
小学校から俺は常にかけっこで一番、あいつはビリ。

ある日夢を見た。
彼の新妻が彼の足をあの唇でむしゃぶり食っている。
そして、その付け根を舐めていると新しい足が生えてきた。
変わったのは足だけではなかった。手先も器用になった。

また夢を見た。
彼の新妻が彼の指を旨そうに一本一本食べている。
そして舐めているとやはり新しい指が生えてきた。

しばらくして彼に話した。
「お前、結婚してから変わったな!」
「お前もそう思うか?なんだか足が速くなったり、起用になったり‥‥。」
「どうしてなんだ?」
「俺にも解らん!」

また夢を見た。
彼の新妻が彼の頭を食べている。そして首元を舐めていると
新しい頭が生えてきた。

頭の回転まで良くなってしまった。確信した。
小学校のときつけたオデコの傷跡がない。
「オイ!お前まだ気づかないのか?」
「なんのことだ?」
「お前は、昔から足が遅くて、不器用で、俺より頭が悪くて‥‥。」
「バカ言うな!俺は昔から足が早くて器用でお前より頭が良かったんだ!」

by don-viajero | 2008-07-13 07:20 | | Comments(0)
2008年 07月 10日

夢 『第四夜・CHANGE』

秋も深まり、我が家でも炬燵が活躍するようになった。
外はヒューヒューと電線を揺るがす冷たい風が吹いている。

オイラは炬燵に潜り込みウトウトしてしまった。
夢を見た。
オイラは向かいの家のシーズー犬になった。

この寒いなかご主人様と散歩に出かける。
自由に歩き回ることもできないリードを付け、
着たくもないチャラチャラした服を着せられ、
「待て!」だの「お座り!」だのやたらに命令される。

向こうから耳に可愛いピンクのリボンを付けた、
魅力的なポメラニアン嬢がやって来た。
少しでも彼女に近づこうとダッシュをしたのだが、
ご主人様にグイっとリードを引っ張られた。
「ウッ!苦しい!」
彼女とのスキンシップさえままならない。
家に帰ってきてからも旨くもないドッグフードだ。

そのうち魚を焼く匂いがして目が覚めた。

「タマ~!お前の好きな秋刀魚ごはんよ~!」

by don-viajero | 2008-07-10 20:26 | | Comments(0)
2008年 07月 09日

夢 『第三夜・猿の家』

里山近くに居を構えたこの辺りにも、
最近、猿が出没するようになった。
当然のごとく我が家の庭にも集団で闊歩する
姿をときどき目にする。

ある日、酷く酔ってしまい、タクシーで帰宅した。
「お客さん、今夜はかなり酔っていますね!
 ろれつもまわらないし、顔もまっかっか。
 まるでお猿さんみたいにね!」
「オレの顔がかぁ~?そぉ~んなことぉ~ねぇ~だろう‥ヒック!
 オレは顔には出ねぇ~ほぉなんだがなぁ~‥ヒック!」
車のなかを泳ぐような、酔っ払い特有の仕草で自分の顔に指を当てた。

-ピーン ポーン-
チャイムを鳴らすとドアを開けたのは、
猿のお面を被った妻だった。
「オイ!おまえ!そんなお面とってしまえ!」
「あら、あなた!かなり酔っていますよ!」
「‥そう‥かなぁ‥‥?」
手土産を待っていた子供たちが起きてきた。
「おとうさん!お帰りなさい!」
子供たちまでもがお面を被っている。
しかも、寿司の折り詰めを買ってきたつもりなのに、
中身がモンキーバナナに化けてしまっているではないか!
-こりゃぁ、だいぶ酔っ払っちまったかな?-

顔を洗いに洗面所に入った。
鏡に映っていたのはまさしく猿の顔だった。
頬を叩いてみた。
「本物だ!お面なんかじゃない!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お客さん!お客さん!起きて下さい!
 お客さんの家に着きましたよ!」
タクシーの運転手が私の頬を叩いていた。

by don-viajero | 2008-07-09 20:22 | | Comments(2)
2008年 07月 07日

夢 『第二夜・留年』

卒業してまもなく大学から一通の知らせが届いた。
「精査の結果、貴殿は3単位足りず卒業を取り消します。
 よって改めて卒業するには復学届けを提出して下さい。」

-エッ?そんなバカな!-
もうアパートも引き払ったし、
就職もして、ましてや婚約も決まっている。
どうしたらいいんだろう!
とりあえず、大学の事務局へ行ってみよう。

慣れ親しんだ駅を降りると、
たくさんの学生が校舎に向かって歩いている。
しかし、そのなかに見知った顔はない。

通知を係りの者に見せ、
なんとか通信制にならないか相談していたときだ。
背後に人の気配を感じた。
振り向くと担当ゼミのA教授がいた。
「君はいくら補修をやっても卒業できませんよ!」
「どうしてですか?」
「そもそも君はこの大学の学生ではないのだから‥‥。」
「どうすればいいんですか?」
教授はニヤっと気味の悪い笑みを浮かべ、
「そうだね‥‥。もう一度受験をして入学するしかないですね!」
「そんな‥‥。嫌ですよ!また勉強し直すなんて!」
そこへ婚約者も現れ、
「私はあなたが卒業するまで待っているわ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「アナタ!アナタ!起きてよ!
 会社に遅れるわよ!
 電車は待ってくれないんだから!!!」

by don-viajero | 2008-07-07 20:11 | | Comments(2)
2008年 07月 06日

夢 『第一夜・笑い』

その日は一日中誰とも口を訊く機会もなく、
一人で急ぎ仕事を片付けていた。
ただ、ただ疲れた。
飯を食い、風呂へ入り、ベッドに倒れこんだ。
-明日は休日だ!ゆっくり寝ていよう!-

傍らにあるラジオのスイッチを入れた。
ちょうど、笑福亭笑福の落語をやっていた。
目を閉じ、耳だけを傾けていた。
-フッ フッ フッ-
疲労と寡黙な一日の最後に口元から笑みがこぼれた。

話が進むうちに大きな笑い声に変わっていた。
-ワッハッハッハッ!!!-
-ハッ ハッ ハッ-
-ハッ ハッ ハッ- 
布団のなかで腹をよじって笑い転げた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

-ガッターン-
ベッドから転げ落ちた。

時計の針は八時八分八秒を指していた。

by don-viajero | 2008-07-06 19:25 | | Comments(0)