陽気なイエスタデイ

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2008年 12月 31日

大晦日・雑感

今年も最後の日を迎えました。

年々歳々、晴読雨読の日が増えていきます。
今年はおそらく人生で一番読書量の
多かった年ではなかったかと‥‥。
その分、暇だったってことですね!

読書というものは、日常の隣にある
別世界に飛び込むにはもってこいです。
文庫本の帯にある文句、
「人生は一度きり。だから、たくさんの人生を読もう。」
まさにその通りである。

若い人には『未来』という時間がいっぱいある。
しかし、すでに老人の入り口付近をたむろしている自分は、
その進行とともに『過去』という時間が、
いっぱい溜まってゆく。

若い時期と違い、悲しみが増えることはあっても、
大仰な『感動』もなく『ときめき』もなく、
日々過ごしていくことでしょう。
それは、たいした起伏もなく「以下同文」と端折って
しまうような毎日かもしれません。
だからこそ、自分のアルバムのなかにある
『陽気なイエスタデイ』を思い起こしていくつもりです。

一年間、このブログを書き綴ってきました。
ご愛読者の皆さま、ありがとうございました。
そして、来年もヨロシク!

来たる年も楽しかった『過去』を掘り起こし、
時折、洒脱な?『超短編小説』を織り交ぜながら、
素敵な?言葉を紡いでいきたいと思っています。

最後に川柳を一句。
「ときめきと 動悸の区別 つかぬ歳」

by don-viajero | 2008-12-31 07:41 | エッセー | Comments(0)
2008年 12月 27日

『分かれ道・Ⅲ』

いったい何のためにこの分かれ道に舞い戻ってきたのだろう。
やり直すためだったのだろうか?
いや、そんなことをしたら今の自分がいなくなってしまう。
ただ、ただ、確認をしたかっただけなのだろうか?
小さな小さな迷いのあった道を選びながらきた結果が、
この大きな分かれ道に繋がっていたのかもしれない。
胸の奥に少しずつ降り積もった不満が、
いつしか若い二人の許容量を超えてしまったのだ。

相手方の4番打者が放ったホームランで、
球場全体が大きな歓声に湧き上がったとき、
ようやく我に返った。
時計を見ると約束の時間に近づいていた。

とうに試合の結果など気にはしていなかった。
胸のなかにある春霞のようなモヤモヤはいっこうに晴れはしない。
重い腰をあげ、車に戻った。
「如何でしたか?」
私は男の問いに答える言葉を見つけられず、
黙ったまま深々と後部座席に身体を沈めた。
「それでは、帰ります。」

「あなた!あなた!大丈夫?」
耳元で妻の声が響く。
辺りは相変わらず春霞に覆われたままボンヤリしている。
「あぁ‥。大丈夫だ‥‥。」
「よかったぁ‥。
 石に躓(つまず)いて、転んだ拍子に気を失ったのね?」
「‥そうみたいだ‥。」
「本当に大丈夫?」
そう言って妻が身体を支えてくれた。
立ち上がって頭を振ってみてもどこにも痛みはない。

そこには過去など振り返らずとも、
私が選んできた十分な幸せがあった。

by don-viajero | 2008-12-27 07:26 | 超短編小説 | Comments(0)
2008年 12月 26日

『分かれ道・Ⅱ』

ハイヤーが着いた場所は神宮球場。
スタンドから歓声が聞こえてくる。
ルームミラー越しに見える私の風体は学生に戻っていた。
「一時間だけお待ちしています。
 それまでには必ずお帰りください。」
「もし‥、戻らなかったら‥?」
「それはご自分で判断してください。」
私はこの時点でようやく理解できた。
今日が何の日かを‥‥。
特段の記念日ではないが‥‥。
セピア色に褪せた遠い過去の苦い思い出‥‥。
それはおそらく私の未来への大きな分かれ道だったのかも
しれない出来事があった日だったことを‥‥。

乾いたアスファルトが下駄の音をカランカランと鳴らし、
外野チケット売り場へと向かった。
そこには彼女が待っていた。
このひと月、山ばかり登っていたので、
久しぶりのデートであった。
二人分のチケットを買い、当時まだ芝生だった人影の疎らな
外野に小さなビニールシートを広げて座った。

私の大学の試合だったのだが、真剣には観ていなかった。
二人とも出逢ってから口を開いていない。
「これが最後のデートだね‥‥。」
「そうなるかな‥‥。」

こんなことになるとは思っていなかった。
私たちは卒業後の結婚を真剣に考えていた。
-なぜだろう?こんなんになってしまったのは‥‥-
それは彼女も同じであったろう。
長い沈黙が続く。
試合の進行なんか目に入らない。
彼女との思い出だけが目の前を飛び交う。

身を投げ出して空を見上げていた。
ふわふわした雲がゆっくり流れてゆく。

「さようなら‥‥。」
彼女から聞いた最後の言葉だった。
「あぁ‥‥。」
振り向きもせず球場から消える彼女の背を目で追っていた。

by don-viajero | 2008-12-26 08:00 | 超短編小説 | Comments(0)
2008年 12月 25日

『分かれ道・Ⅰ』

その日は春霞に覆われてモヤーっとしている朝だった。

玄関を出ると、目の前に制帽、制服、白手袋をした
見知らぬ男が立っていた。
「おはようございます。お車の用意はできております。」
「はぁん?お車?どこのどなたか知りませんが、
 私は自分の車があります。」
「いえ、それはわかっておりますが、
 今日はあなた様の特別な日でございます。」
男は鉄火面のように表情ひとつ変えずにそう言った。
「はて?特別な日ってなんだろう?
 誕生日でもないし‥‥?」
「兎に角、あの車に乗ってください。」
男が指差したところには、ピカピカに磨き上げられた
黒塗りのハイヤーがエンジンをかけたまま止まっていた。
狐につままれるような感覚で男の指図に従い、
後部座席に座った。

「ところでどちらまでにしますか?」
「そんなこと‥、言われても‥‥。」
「あなた様のご希望の場所、時間へお連れいたします。」
「時間‥‥?ひょっとして‥‥?」
「はい!かしこまりました!」
そう言うやいなや後部座席を遮断するガラスが下りてきて、
白いガスが流れ、私は深い眠りについた。

by don-viajero | 2008-12-25 21:21 | 超短編小説 | Comments(0)
2008年 12月 21日

超短編小説 『クリスマス・イブ』

「ねぇ、パパ。仕事へ行く前に息子にも
 クリスマスプレゼントをあげてくださいな!」
「あぁ、わかってるよ!もう寝ているかな?」
「えぇ。きっとサンタさんの夢でも見ているころじゃなぁい?」

すっかり仕事服に身支度した彼は、
そ~っと息子の部屋のドアを開けた。
真っ暗な部屋の窓辺からは、僅かな月明かりが
静かな寝息をたてている息子の顔を照らしていた。

枕元にプレゼントを置こうとしたとき、
床にあったおもちゃを蹴飛ばしてしまった。
-ガッチャ~ン-
目を覚ました息子が、
「あれぇ~?なぁ~んだ、サンタさんってパパだったのぉ~?」
「そ、そうなんだよ!パパがサンタさんじゃ嫌かい?」
「うぅ~ん。そんなことないよ!
 サンタパパさん、ありがとう!メリー・クリスマス!」
「メリー・クリスマス!おやすみ!」

「ママ。ばれちゃったよ!夢を壊しちゃったかな?」
「パパが失敗するなんてめずらしいわね!
 もうそろそろ気がつく歳だもん、仕方ないわ!
 でも、他の子供たちは起こさないようにね!」
「わかった。気をつけるよ!
 それじゃぁ、行ってくるね!」
「行ってらっしゃ~い!」

彼は外に待たせてあるトナカイのソリにプレゼントの
一杯詰まった大きな白袋を乗せ、手綱を引き号令をかけた。
トナカイたちは雪を巻き上げ、ソリは宙に浮き、
天高く舞い上がっていった。

by don-viajero | 2008-12-21 09:01 | 超短編小説 | Comments(2)
2008年 12月 16日

超短編小説 『現在・過去・未来』

私より遥かに若いきみは、狭いガレ場の登山道を
ヒョイヒョイと歩いてゆく。
辺りはミルク色の霧に閉ざされ、私はなんとかきみの
後ろ姿を見失わないように追いかけてゆく。

登山道から落ちる小石がガラガラと音を立て、
不安定な岩を巻き込みながら、
奈落の底へとその響きを大きくして崩れ落ちてゆく。
溌剌と歩を進めるきみにはどうやら聞こえないらしい。

先を行くきみの前に小さな山小屋が、
霧のなかからボンヤリと現れた。
きみは小屋の外にいた老人となにやら話し込んで、
私を手招きし、二人して小屋の中に消えた。

平屋建ての小屋の内部はさながら小さな図書館だ。
二人は私に背を向けたまま会話にはしゃいでいる。
山や旅、本の話題だ。
私は聞き耳を立てながら、本棚に並んでいるものを眺める。
「岩と雪」、「山渓」の雑誌や山岳文学本。
世界中の国の名が記された旅行本もある。
私の本棚にある物以外の見知らぬタイトルを冠したものや、
学生時代、図書館で借りた本までがある。

しかし、私は先を急がなくてはならない。明日の仕事に‥‥。
きみと老人の間に座ってゆっくり話をしたい‥‥。
十分な温かさを放出する薪ストーブの前で談笑するきみと老人は、
私の存在を無視するかのように二人だけの世界にいる。
確かに見覚えのある二人の後ろ姿‥‥。

入ってきたドアは消え失せ、書棚以外の場所は総ガラス張り。
外の真っ白なミルク色したガスに覆われているように
私にはなにも見えない。ただ見えているのは現実の煩わしさだけ‥‥。

ガラス越しからわずかに光が零れる空間が現れた。
少しばかり開いていた窓を開け、私は外に出た。
一目散に光を求めて走り出した。
振り向くとあれほど視界を邪魔していた霧もすっかり晴れ、
山小屋もなくなり一本の険しい登山道だけが続いていた。

カーテンの隙間から差し込む朝日に目覚まされたとき、
私の目の前にはきみも老人もいなかった。
ただ、いつもの見慣れた風景だけだった。

by don-viajero | 2008-12-16 20:28 | | Comments(2)
2008年 12月 10日

記憶力

「天高く馬肥ゆる秋」
これは冬に向かって体力を蓄える意味だそうだ。
食料の乏しくなる冬期の前、寒さに耐えられる身体を
造るために大食いをする動物的本能。
なにも秋というだけで物が美味しくなるということではなさそうだ。

体力は鍛えればなんとかなる。
しかしながら記憶力だけはそうはいかない。

昔のこと‥なかには勝手な思い込みで変に脚色されて
しまったものや、大事なことが欠落してしまったものも
あるだろうが、結構過去の記憶はセピア色にあせても
甦ってくるものだ。
しかし、近々の記憶力がすっかり落ちてきた。

毎日ノートに記録してあれば少しでも思い出せるのだが、
サボってメモらなければ、昨日のことはなんとかなるが、
一週間前のことなんかとてもじゃないが思い出すのに苦労する。
工程として一日ずつ日を遡りながら記憶の糸を
手繰(たぐ)り寄せる始末である。

当然メモ魔になってゆく。机の上にはなんでも書け込める
用紙を置いてある。しかし、それらが積み重なって、
肝心な見つけたい用件を探すにも一苦労してしまう。
なにせ雑記帳のようなものだから、一枚の紙に
関連性のないものが汚い文字で殴り書かれているのだ。

日々、あまりにも脳みそに詰め込まれるものが
多過ぎるのかもしれない。
最近の出来事なのだが、テレビを観ていると電話が鳴った。
子機を取り、短い会話は終わった。
再びテレビのチャンネルを換えようとしたときには、
その子機で一生懸命数字を押している自分がいた。

はたして、なんらかの方法で記憶力を補う術はないものだろうか‥‥。

小話・診察室で
「先生、最近物忘れがひどくなってきたんですが‥‥。」
「ほぅ、それはいつごろからですか?」
「それが‥‥、いつごろだったか思い出せないんですよ!」

by don-viajero | 2008-12-10 20:15 | エッセー | Comments(2)
2008年 12月 05日

超短編小説 『面影』

旦那とは大学卒業後、すぐに結婚したの。
友人たちも羨む『いい男』だったわ。

生まれてきた男の子は目、鼻、口、どれをとっても旦那似。
私に似ているとこなんかまったくなかったのよ。
世間では「男の子は母親に似てくるよ!」って言ってくれるけど‥‥。

小学生になると仕草や癖までが旦那そっくり。
中学生になって変声期が過ぎると、
声までが旦那と間違えるほどになったわ。

息子17歳。バリバリの高校生。
若かったころの旦那に逢えることを秘かに期待しているの。
-ひょっとして息子に恋をしてしまうかもしれない!-
そんなバカなことまで真剣に思ってしまうぐらい、
『いい男』になっていくの。

だって、『いい男』の横で大口を開けてご飯を食べている
昔の『いい男』・メタボ旦那は頭が禿げ上がり、
今は見る影もないんだもん!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女房とは学生時代同じゼミで知り合い、
卒業後すぐに結婚した。
友だちはあまりの『いい女』にヨダレを垂らしたもんだ。

二番目に生まれた長女は未来の彼女を彷彿させるに
十分に可愛かった。射止めた愛しい女房そっくりだった。

成長するにつれ益々母親に似てきた。
まわりの者、誰にでも好かれ、活発ではあるが
控えめのツボも心得ている。
まるで幼かったころからの女房のアルバムを
順を追って見ているようだ。

まさに『番茶も出花・Sweet-Sixteen』を謳歌している。
成人してから一緒に街を歩くのを今から楽しみにしている。
ただ、顔立ちや性格も女房そっくりな、そんな娘に心配ごとがある。

それは『いい女』の横で飯をぞんざいに食っている、
すっかり幸せ太りの元『いい女』と見比べてしまう‥‥。

by don-viajero | 2008-12-05 20:47 | 超短編小説 | Comments(3)
2008年 12月 01日

あだ名

小学校までは『ふんぼ』って呼ばれていた。
名前の上二文字の『ふみ』からだろう。
『ふみぼ』が進化?して『ふんぼ』。

そのころ『かずお』君は『かずぼ』。
同じように『てる‥』は『てるぼ』、『よし‥』は『よしぼ』。
たぶん、〇〇坊が転じて『〇〇ぼ』になってしまったのだろう。

例外もある。『おさむ』君の場合、『おさぼ』ではなく『おちゃ』。
『さだお』は『ちゃぁ』、『ひさこ』は『ちゃこ』だ。
『さ』が『ちゃ』に変換してしまう。

中学以上になると、お互い呼び捨ての苗字だけになる。
その代わり、先生にあだ名が付けられる。
中学の担任は顔が長い馬面(うまづら)だったので『ホース』。
高校の担任は大学時代ボート部で戦中、海軍にいたことも
あって『艦長』。この呼び方、本人はかなり気に入っていたようだ。
化学の先生は当時、テレビでやっていた『フライマン』。
そっくりだった。数学の『守屋』は逆さまで『ヤモリ』。
もっとも高校生ともなれば生意気になり、目上の先生であろうと
お構いなく、そのほとんどは苗字ではなく名前の呼び捨てだった。
例えば『〇〇門十郎』は『もんじゅうろう』、
『〇〇初命(はつのり)』は『しょめい』、
『〇〇侃爾』は『かんじ』‥‥。

小学校の同級生でず~っと付き合っている友がいる。
最近は『織り姫星と彦星』ではないが、一年に一回だけ必ず
久闊(きゅうかつ)を叙して酒を酌み交わす。

私は彼のことを昔からの呼び方で、名前の上二文字
『〇〇ちゃん』と言い、彼は『ふんぼ』と呼ぶ。
家族の話はほとんどしない。
それは二人だけの世界に入り込んでしまうからだろうか?
お互い、記憶の奥にあるひだをくすぐりあうひとときである。

by don-viajero | 2008-12-01 20:07 | エッセー | Comments(2)