陽気なイエスタデイ

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2009年 02月 26日

超短編小説 『新しい店』

「君子ぉ~!今度、出店してきたさぁ~、
 あのコンビニ、行ってみたぁ~?」

「うぅ~ん。まだ行ったことないよぉ~!
 紀子はどうなのぉ~?」

「昨日、行ったよぉ~!」

「でぇ~、どうだったぁ~?」

「店員たちがさぁ~、目つきがさぁ~、
 み~んな、キモイんだよなぁ~!
 レジの若い兄ちゃんなんかさぁ~、
 ジ~っと、アタイのことぉ~、見ていてさぁ~、
 色目使ってるみたいなんだよぉ~!
 超ぉ~気持ちわり~ったらありゃしないよぉ~!
 
「ほんとぉ~?嫌なヤツやなぁ~!
 それでぇ~?」

「なんかさぁ~、大きさのわりにさぁ~、
 店員の数も多いようなぁ~、気もするしぃ~、
 品定めしているとぉ~、知らないあいだにさぁ~、
 そぉ~っと、背後に来てさぁ~、
 『何をお求めですかぁ~?』だ~って!
 ギョっとしたよぉ~!
 しっかもねぇ~、普通のコンビニよかさぁ~、
 防犯カメラやぁ~、ミラーがさぁ~、
 い~っぱい、天井からぶらさがってるんだよぉ~!
 もう、二度と、あんな店でやりたくないよぉ~!」

「そうぉ~!
 だったら、アタイも行かないよぉ~!
 ヤッバイもんねぇ~!」

by don-viajero | 2009-02-26 20:35 | 超短編小説 | Comments(1)
2009年 02月 22日

『わが落胆の記』 番外編

薄暗くって、小汚く、狭い部屋の隣から、
なにやら、ブツブツつぶやく声が、聞こえる。
「オレは経済通で、外交には明るいんだ!」
どうやら、あのお方らしい。
どうせ、口をひん曲げての独り言だろう。
親族、株主たちが、ヤツが会社を継がず、
弟に任せたことに、諸手を挙げて、
喜んだことを、僕は知っている。
「オレは経営者感覚を持っている」
なんてほざいても、誰も信用しない。
しかも、すでに継いだ会社の一つを
潰してしまっているではないか。

もう一方の壁からは、
「笑っちゃうよ!」って言いながら、
エルビスの曲を、口ずさみながら、
ステップを踏んでいる、変人がいるらしい。

遠く離れた部屋からは、大声で、
「アメリカが‥‥!こんなはずではなかった!」
と言いながら、経済専門用語を並べたって、
喋り捲っているヤツもいる。

目の前の、やはり薄暗い大部屋の、
数段高く積まれた畳の上には、
指定暴力団・森組の森悪朗会長と、
草加組会長の池田鬼作がデンと、坐っている。
その下の、冷たい板の間には、うな垂れた
僕の顔見知りの連中が、シーンとしていた。
なかには、涙ぐんでいるヤツもいた‥‥。

僕は思った。
これは『わが落胆』ではなく、
『わが友らの落胆』であった‥‥と。

by don-viajero | 2009-02-22 12:50 | 超短編小説 | Comments(0)
2009年 02月 22日

超短編パロディ小説『吾輩は犬である』

吾輩は犬である。名前はもうある。
何でも薄暗いじめじめした所で、
ワンワン泣いていたことだけは記憶している。
それでもちゃんと血統書だけは付いている。

吾輩はここで始めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くと獰悪(どうあく)なブリーダーだった。
その後、買われていった家族の待遇も酷かった。
そこでは、吾輩がオスだというのに、
あまりの毛並みの美しさに惑わされて、
「Lady(レディ)」という名をつけられてしまった。

子犬のころは、ダイエットに励む奥様とよく散歩を
したものだった。
家人みんなから、まさに「猫っ可愛がり」
されたのだが、いつのまにか玄関脇の
小さな小屋に繋がれ放しになってしまった。
散歩にも連れて行ってもらえない。
食事も味気ないドッグフードのみ。
あの眩いばかり美しかった毛並みもまるで野良犬だ。

それがなにを思ったのか、ある日から屋敷犬として
家人たちと一緒に過ごす家の中に入れてもらった。
しかし、躾というものをちっともしてくれなかったおかげで、
家中、辺り構わずクソやらシッコを垂れまくっている。
そんな粗相をしてしまうと、いかにも悪人面した
ご主人様が、吾輩を虐める。
だからヤツが油断したとき「ガブッ」と指を
噛んでやる。
この家にいるオスは吾輩とご主人様だけなのに、
どうしても仲良くなれない。

ゲージに閉じ込められるたびに「Why(ホワ~イ)?」と
間の抜けた大アクビをしながら考える。
「Gentleman(ジェントルマン)」って
名前にしてくれていたら‥‥と。

by don-viajero | 2009-02-22 08:40 | 超短編小説 | Comments(2)
2009年 02月 21日

超短編パロディ小説 『わが落胆の記』

僕は、僕の母の胎内にいるとき、お臍の穴から、
僕の生れる家の中を覗いてみて、
「こいつは、いけねえ」
と、思った。頭の禿げかかった親父と、
それに相当した婆(ばば)とが、薄暗くって、小汚く、
恐ろしく小さな家の中に、坐っているのである。
だが、神様から、ここへ生れて出ろと、云われたから、
「仕方がねえや」
と、覚悟したが、そのときから、貧乏には慣れている。

しかし、苦学の果て、日本の最高学府・東京大学に
入学金、授業料免除の特待生となり、卒業した。

数年後、ある政治家の秘書をしていたとき、
とんでもない、資産家のお嬢様に見初められ、
逆玉で、婿入りした。
そして、そのままの勢いで、政治家になった。

順風満帆、ときの、オバカお坊ちゃま宰相から、
財務大臣に任命された。
このお方、生れたときから、お金持ちで育ったせいか、
「貧乏」と云う日本語が、どういう意味なのか、
皆目、解らないらしい。
しかも、僕は、いくら貧乏でも、
「嘘はつくな!嘘をつけば口が曲がる!」
と、親から教えられてきたのだが、平気で嘘をつく。
だからか、いつでも口が曲がっている。

残念ではあるが、この辺りから、僕の歯車が狂いはじめた。
体調のすぐれないまま、出席した世界会議で、
大好きなワインを、「ゴックン」して、
醜態をさらしてしまい、大臣を辞任。

しかも、「よっ!日本一!」などと、持ち上げてくれた妻にも、
随行の某新聞記者、越後屋知子嬢との浮気がバレ、
ついには、妻から三下り半を突きつけられて、
今また、薄暗くって、小汚く、恐ろしく狭い部屋にいる。
なにせ、僕は、貧乏には慣れているのだ。

でも、目覚めたとき、ふと思う。
-この部屋って、ひょっとして‥‥?-

(直木三十五著:貧乏一期<副題・わが落胆の記>
 をパロディ化してみました‥‥)

by don-viajero | 2009-02-21 21:22 | 超短編小説 | Comments(2)
2009年 02月 19日

音楽室

小学校6年間お世話になった学び舎は、
今はもうない。
私たちがその学校最後の卒業生だった。
隣の小学校と統廃合されたのだ。
その2年後、校舎は取り壊されて公園になった。

板張りの古ぼけた校舎の南東の隅、
教室の入り口付近の廊下が、ギシギシと
気味悪く鳴る一階に音楽室があった。

横には川幅の広い澱んだ用水が静かに流れ、
桧やら杉の大木がすっくと立ち並び、
南に面してるというのに、日中でさえ
申し訳程度の木漏れ日が差し込むだけの
ジメジメした教室だった。

壁の高いところに飾られた、奇怪な髪型をした
バッハやヘンデル、ハイドン、モーツアルト、
ベートーベンらの肖像画が生徒たちを見下ろしていた。

低学年だったころ、学校中に
「音楽室の下は、昔お墓だったんだってさ!」
そんな噂が広がった。

怖くて授業以外、近寄りたくない場所だった。
まるで亡霊たちが囲繞(いじょう)する、
昼なお暗い教室からは、誰かが弾くピアノの音だけが
静かに響いてくるような気がした。

私が4年生になったとき、その音楽室は
二階の南西にある明るい教室へと移った。

何故、移動したか‥、未だに知る由はない‥‥。

by don-viajero | 2009-02-19 20:08 | エッセー | Comments(0)
2009年 02月 15日

帽子・Ⅱ

私の帽子コレクションに新たに、今回家族で訪れた
ペナンで購入したものが一品加わった。
なんと「ルイ・ヴィトン」の帽子である。

しかしながら、私がそれを被ったところで友人らに、
はなから「ほんまもん」だとは思われるはずがない‥‥。
と言うのが同行した家族らからの意見でもある。
もっとも、その通りだという変な自信もないではないが‥‥。

バトゥ・フェリンギという場所で毎晩繰り広げられる、
「ナイト・マーケット」のバッタ物市場で、
売値1000円ほどのを値切って、たった500円で買った物である。
いわゆる「ブランド品」だ。ただし冠に「偽」がつく代物だ。
おそらく、今後お気に入りの一品として大いに
見せびらかすことであろうことは容易に想像できる。

もう、かれこれ10年前ぐらいに友人らと行った韓国・ソウルで
やはり、偽ブランド品を土産物用として買った。
露店で堂々と売っているものは、如何にもそれらしく
偽物っぽい安物ばかりだ。
ところが、交渉が進むにつれ、ちゃんとしたショップの
奥のほうに通されると、そこは本物と見間違えるような
品物がズラリと並んでいる。
私が「どうせ偽物なんだから安くしろ!」と言ってみたところで、
相手は「ほとんど本物そっくりだ!」の一点張り。
そのときは、かなりの粘りをして見せた結果、
それでも「プラダ」の保証書付のサイフを言い値より
安くたたいて買ってきた。

要は偽物であろうが、安物であろうが本人が納得して
身に着けるのであれば、そうそう目くじらたてる
必要はないように思えるのだが‥‥。

by don-viajero | 2009-02-15 20:35 | ◆旅/全般◆ | Comments(2)
2009年 02月 07日

超短編小説 『肖像画』

ある画廊に、いかにも大金持ち風の一人の
男が入ってきた。客は誰もいない。
男は壁面の大仰に飾られた絵画をぐるっと一瞥した。
画商が揉み手をしてその男にそっと近寄る。
「いらっしゃいませ!
 どのような絵をお求めですか‥‥?
 この入り口にある、壮大な北アルプスを描いた
 絵なんかいかがでしょうか?」
「風景画は嫌いだ!」
「それでは奥のほうに飾ってある、
 見事なバラの静物画なんかは‥‥?」
「そんなもんにようはない!
 肖像画が好きなんだよ!」
「すみません‥‥。わたしくしの店では
 肖像画は一枚も扱っておりません‥‥。」
「嘘を言ってはいけないよ!
 私はなるべくたくさんの肖像画が欲しいんだ!
 できれば同じ人物のもの。
 そうさなぁ、千人分ぐらい‥‥。」
「はぁ?」
「福沢諭吉でいいんだよ!」
ポケットから出した男の手には拳銃が握られていた。

by don-viajero | 2009-02-07 09:03 | 超短編小説 | Comments(2)
2009年 02月 02日

超短編小説 『会話』

「ところで雅美!あんたんちの浩平君、三年生だよね!」
「そうよ!」
「最近、私、息子と会話がないのよね!」
「どうして‥‥?だってぇ、恭子んちの純也君、
 まだ一年生になったばかりでしょう!」
「それが‥‥。学校から帰って来てからゲームばっかり!」
「それはうちでもおんなじよ!
 最近のガキどもはゲームに夢中よ!」
「今度、逢ってゆっくりお茶でも飲みながらお話しましょう!」
「そうね!」
「それじゃぁ、またね!」

気がつくと、隣でゲームに熱中していた純也が
ギャァギャァわめいていた。
「ママァ!ねぇ!ママァ~!
 夕ご飯、まだぁ~?ボクお腹すいちゃったぁ~!」
「純也!さっきからなにを騒いでいるの?」
「だってぇ‥‥。
 ママ、ず~っと携帯メールばっかしやっていて
 なんにもしてないんだもん!」

by don-viajero | 2009-02-02 21:10 | 超短編小説 | Comments(2)