陽気なイエスタデイ

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2010年 10月 31日

晩秋ラン

朝、確認したヤフーのピンポイント天気予報では、
午前中どっ晴れで、気温も10℃を越えていた‥‥。
パッチワークを貼り付けたような、紅葉に染まる山々を
眺めながらの爽快なランニングになるはずだった‥‥。

家を出るときには、ポツリポツリ少しばかり落ち
出していた。寒くないのに、白い綿を纏ったような
小さな雪虫が舞っている。
走り始めてしばらくすると、体がやけに軽く感じる。
-少し遠回りでもするか‥‥?-

霧に噎ぶ高原のように、雲が山裾まで迫っていた。
次第に暗くなってきた空は小糠雨に変わり、本格的な
雨へと移っていった。

しとしととアスファルトを濡らす水滴と同様に、
晩秋を迎えた通りには、擦れ違う車の音以外、
静かな時間だけが過ぎ、ピシャピシャと地面を蹴る
音だけが後ろに流れてゆく。

ウェアーはびしょ濡れになり、被っている帽子の
ツバから落ちる雫は、額を伝う汗よりも多くなってきた。
雨のなかでのランニングは初めてだ。
捲し上げた腕に当たる雨粒に冷たさの感触を覚えた
ぐらいで、寒気はなかった。それよりか体の軽さのほうが
走ることを楽しんでいる。
いつものコースを外れ、2㌔ほど余計に走った。

帰路に向う途中小雨になり、山にかかっている雲が
明るさを増し、白んできた。

最後の100mほどの上り。下を向き、歯を
食いしばってのラストダッシュ後、息の弾む顔を
上げると、パッと一箇所だけ雲が裂け、陽の光が
山の紅葉を鮮やかに照らしていた。

by don-viajero | 2010-10-31 16:51 | Run | Comments(0)
2010年 10月 29日

記憶・Ⅲ

一瞬にして鮮やかな色付きに変わるような、
K君との楽しかった記憶もあれば、記憶の底を
さらうようにして出現し、体中の産毛をちりちりと
ざわつかせ、情けなさや悔しさに全文消去して
しまいたくなるものまでが、しっかり保存されている。

何かを忘れてしまいたい思い。逆に忘れずにいたい
思い。きっといつかは忘れてしまうのだろうという
疚(やま)しさが先に立って、いつまでも取り払えずに
いる思いは、誰にでもあるだろう。
何かを忘れずにいることが絶対に不可能だから、
ますます何かを絶対に忘れたくなくなってくる。

長い人生を歩んでゆくうちに、保存された記憶で
いっぱいになってしまうだろうはずの脳みそは、
まだまだいくらでも隙間があるらしい。

掴もうにも掴めない、触れようにも触れることの
できない水のなかにできた水溜りのような記憶。

半世紀も元気に生きてきた証が、偽りのない姿で
鏡に映し出されている。
そんな自分のそれぞれの時代が生きている記憶の
表側にある顔と、めっきり白いものが目立ってきた
髪や髭を見て、
-ずいぶん、爺くさくなってきたなぁ‥‥。-
と苦笑交じりで思う。
向こうも同じように苦笑いを浮かべ、
-お互い様だよ!-
鏡のなかの私が呟いた‥‥。

『記憶・Ⅰ』
『記憶・Ⅱ』

by don-viajero | 2010-10-29 20:08 | エッセー | Comments(0)
2010年 10月 26日

山の野生児

中学の集団登山以降、山なんか登ったこともない男。
春、町営の山小屋赴任を命じられた地方公務員の
その男は、途中、挨拶に寄った燕山荘の長老たちに
手荒い酒を飲まされ、目的の小屋直下で真っ暗に
なってしまい、ハイマツの中に枝を敷き詰め一夜を
過ごした。辺りは雪に覆われた世界だ。

その男は、山小屋でのアルバイトで知り合ったK君。
彼は中学一年のとき、私が応援団長だったことを
覚えていた。

いつも白い長靴を履いて飛び回り、まだ小屋の周りに
雪が残る時期、素足を投げ出し、長靴を逆さまにして、
ジャーっとなかに貯まった水を出していた。

私と同時期にバイトに入っていた、K君の高校時代の友人、
S君とともに、それぞれ当時お気に入りのアイドル名で
トランシーバーの交信をした。
「は~い、こちら水場のナナちゃん!
 ヒロミちゃんに代わりま~す!」
「こちら、小屋のセイコちゃんで~す!」

雨が降れば、小屋のなかで卓球、大貧民、将棋は
何百回となく指した。二人して下界に降りた折には
夜中、中学のプールに忍び込み、ウィスキーを
煽りながら泳いだこともあった。

夏の最盛期も過ぎ、山の斜面の雪がすっかり溶けて
消えたころ、登山客から、東側の斜面にヤッケらしい
ものが見えると言う連絡を受け、K君とでガラ場を
降りていった。そこにはシャレコウベに少しだけ毛髪を
残した『お六』が転がっていた。
前年11月、燕山荘を出て行方不明になった登山者だ。
「こいつ、いい靴履いてやがる!」そう言って靴を例の白い
長靴で蹴ると、なかから蛆虫がワっと這い出てきた。
そんな、不埒な行為にバチが当たったのか、その遺体を
彼が里まで背負子で下ろす羽目になってしまった。

35年も前のセピア色に褪せた記憶の一つ一つが、一瞬にして
鮮やかに彩られ、目くるめく甦ってくる‥‥。

S君は5年前、そして一昨日、そんな野生児だったK君が
家族を残し、病魔には勝てず、鬼籍に入った‥‥。

                                合掌

by don-viajero | 2010-10-26 20:08 | | Comments(2)
2010年 10月 22日

-ちんちろちんちろ ちんちろりん
 りんりんりんりん りいりん-

夏の終わり、暗くなり始めると鳴き続けてきた
虫たちも、めっきり静かになり、秋も晩秋へと
向かい、冬の足音がヒタヒタと近づいてきた。

こうなると、私のなかに居ついた虫が疼き出す。
ゴソ、ゴソ、ゴソゴソっと‥‥。
そう「旅の虫」だ。

ファドの余韻をまだ耳の奥に残していた春先、
すでに、ボンヤリと次回の行き先を決めていた。
-来年は、陽気なサルサでも踊りに行こうか?
 カストロの元気なうちにキューバだ!-

アメリカン・グラフィティを彷彿させるような、
オンボロキャデラックをはじめ、ポンコツ
クラシックカーの走るスパニッシュ・コロニアルの
街並みに、明るく陽気な人々との触れ合いが、
きっと待ち構えていることであろう‥‥。

夕食後、ネットで検索する毎日が続く。
いまだに、米国と国交がないキューバへの入国は、
米国からのダイレクト便はない。
エアー・カナダにしようか?それとも、マイレージ
ポイントの貯まるアメリカン・エアラインズでカンクン
経由でもいいかな?はたまた、マイアミから他の
カリブの島経由の案も‥‥。日程は?宿は?‥?

サルサのように脳みそまでが、陽気にクルクル
踊り出しそうだ‥‥。

by don-viajero | 2010-10-22 20:15 | ◆旅/全般◆ | Comments(2)
2010年 10月 19日

男の料理・Ⅳ

先日、久しぶりに寿司を握った。

根室の友人(魚屋さん)から秋刀魚が届き、
ちょっと贅沢に、かねてから仕入れていた
『楽天・訳あり商品』の南鮪・中トロとで握った。
米は、やはり富山の豪農の友人から送られてきた
『コシヒカリ』だ。

刺身包丁を念入りに研ぎ、秋刀魚の頭と尻尾を
切り落とし、背に包丁をそっと入れ、皮を剥ぐ。
三枚にさばき、真ん中は焼く。
酢飯は軽くご飯茶碗一杯分。
シャリを小さくしたため、13貫分になった。

お供のお湯割り焼酎とともに、高級寿司店にいる
気分だ。ただし、キトキト(富山地方の方言で
新鮮な‥)ならぬ、ギトギト感は否めない‥‥。

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by don-viajero | 2010-10-19 19:58 | 男の料理 | Comments(1)
2010年 10月 16日

カトマンドゥ

朝靄のなか、通りの角の店で焼くハッシケーキの
甘い匂いと、乾燥させた牛糞を燃料に朝食を準備する
家々から立ち上る煙の匂いが、微妙に溶け合い
鼻をくすぐる。ヒンドゥの神々に花や香を手向ける人々の
なかを、牛だけがのんびりと優雅に歩いている。
幕が開けるように、白いモノトーンの世界が次第に
明るさを増し、はるか遠くに万年雪を被ったヒマラヤの
峰々の威容が浮かび上がってくる。

私は香港の女子高の教師。
数名の生徒を引き連れネパール・カトマンドゥに来ている。
もちろん、彼女たちとの会話は中国語だ。
彼女たちを連れて市場へと出かけた。

裸電球のぶら下がる薄暗く狭い路地を様々な店が軒を
連ねている。ある雑貨屋の前で、彼女たちの足が止まった。
どうやら可愛らしいグッズがあったらしい。中国語特有の
賑やかな大声が響き渡る。とりわけ生徒の一人、
アグネス・チャンはやかましい。
私は急にビールが飲みたくなり、店主に、
「Do you have a beer ?」と訊ねた。
「No !」
「Where can I buy ?」
「That shop !」
と古めかしいピッケルのぶら下った店を指差した。
私は彼女たちを残し、その店に足を向けた。

一坪ほどの空間にぎっしりと中古の登山用品を並べた店。
その奥の暗がりに初老の男が坐っている。
「Aちゃん!」
すっかり少なくなった毛髪に白いものが目立つ男は、
紛れもなく、幼馴染のAちゃんだった。
「やぁ‥‥、フンボじゃないか‥‥。」
弱々しく言い返してきた。
そのとき、突然誰かが騒いだ。
「Police ! Police ! Run away !!!」
顔を回転させ、その声を追った。
振り返ると、そこにAちゃんの姿はなかった‥‥。

by don-viajero | 2010-10-16 20:18 | | Comments(2)
2010年 10月 13日

つるべ

いまの若い人たちは『鶴瓶』は知っていても、
『釣瓶(つるべ)』はおそらく知らないだろう。

ところが、どっこい「秋の日はつるべ落とし」となれば、
知らない者は少ないのではなかろうか‥‥。
「釣瓶落としといへど光芒(こうぼう)しづかなり」
                      ‥水原秋桜子

この時季、晴れた日、一日の終わり、西山に沈む太陽と
雲を眺めているだけで、あっという間に暗くなってしまうように
なってきた。そこに茜色の雲間から『天使の梯子』でも
出現しようものなら、その日を一気に幸せに導いてくれる。
夏の雲は刻々、そして秋の空は日ごとに変わる。
6時ともなれば、どっぷりと闇に支配されてしまう。

『星の王子さま』が訪れた五番目の星。
そこにはまじめな点燈夫が、たった一分間で一日が
ひとめぐりしてしまう小さな星で、街燈に火をつけたり、
消したり忙しなく働いている。

明日の陽を仰ぐまで、日本各地で追われるように
街燈を灯す点燈夫たちばかりでなく、慌しく灯りを
求める人々で一杯だ。

地中700mに閉じ込められ、人工の灯りだけで
暮らしていた、33人の忍耐強かった人々も、
ようやく、すばらしい太陽の恵みの光にあたる
ことができるようになった‥‥。

by don-viajero | 2010-10-13 20:20 | エッセー | Comments(0)
2010年 10月 10日

坊主考

昨日、無事父の一周忌を済ませた。

不思議なことに、法事では一周忌の翌年が
三回忌となる。これは二年も空けてしまえば、
坊主のありがたさを忘れてしまうのではないか、
というものらしい。

古来僧侶は書物を嗜み、学が高かったため
衆人から崇められていた。
その反面、悪さに関しても自分たちに都合の良い
解釈をしてきた。

おでんにあるガンモドキは、もともとは精進料理で、
肉の代用品としてできた坊主の発明品だ。
殺生してはいけなかった時代、どうしても雁を
食したかった所以である。

そして、二本足の鳥を食してもよくなってから、
彼らはどうしても兎の肉を食べたくなった。
そこで、鶏肉と兎肉の味が似ていたので、
兎の数え方を一羽、二羽と呼ぶことにしたのだ。
(他にも諸説あるが‥‥。)

戒名はその昔、仏門に入り受戒した者だけに
与えられたものだった。
寺院にたくさん寄進した皇族たちだけが「院号」。
そして、足利尊氏以降、歴代の将軍たちがつけた
「院殿号」となる。
もっとも今では、お金さえ積めばどんな戒名でも
貰えるらしいが‥‥。
一般的な戒名制度そのものでさえ、日本でしか
存在しない慣習であり、他の仏教国では見られない。

こんな堕落した坊主への庶民の当てつけが
「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」になったのであろう。

by don-viajero | 2010-10-10 18:35 | エッセー | Comments(2)
2010年 10月 07日

レンゲ種まき、そして脱穀

土曜日、脱穀作業の前にレンゲの種5㌔を蒔いた。
朝、発芽を促すため、川原砂と揉んで固い種に傷を
つけさせたものだ。
今朝、田んぼを見に行くと、あちこち可愛い葉っぱが
出始めていた。
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毎年、脱穀は収穫の田んぼでやっていたのだが、
グチャグチャにぬかるんでいたので、近くのお寺の
空き地を借り、暖かな日差しの下、無事終了!
はたして、収穫は‥‥?
思ったほどではなく、昨年に比べ減収だった。
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脱穀も後わずか‥‥。
軽トラの荷台に坐る二人は、次代の農業を担う
兄弟となるか‥‥???
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by don-viajero | 2010-10-07 19:51 | ずくの会(米作り) | Comments(0)
2010年 10月 03日

虫の知らせ

まだ二十歳になる前、姉が結婚した。
少しばかり頼りない義兄ではあったが、
突然できた兄貴という存在に大いに喜んだ。

奇遇にも誕生日も同じ。
高校時代の一時期、山岳部に籍を置いていたという
彼からウッドシャフトのピッケルを貰い受けた。
それは、シモンのものを買うまで愛用していた。

亡き親父の還暦祝いの席で、隣りに坐って以来、
ずいぶん長いこと、じっくり話したことがない。

夫婦のことだから詳細は解らないが、数十年前、
二人は離婚した。
それからというもの、ほとんど逢ったこともないし、
もちろん、言葉を交わしたこともない。
話題に載ることさえなかった。

過日、そんな義兄の夢を見た。
歩きながら、とりとめのない話をいっぱいした。

翌日、義兄の母の死を知らされた‥‥。

by don-viajero | 2010-10-03 19:27 | | Comments(0)