陽気なイエスタデイ

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2008年 02月 24日

吹雪

昨日の冬山のなかにでもいるような猛吹雪も去り、
この里でも寒いながら穏やかな日差しが降り注いだ日曜だった。

1974年。やはり2月。
初めて本格的な冬山に挑む友人三人とともに
五竜・遠見尾根に入っていた。

西遠見にウィンパー(冬用テント)を設営し、
翌日、ガスのなか白岳を経て五竜小屋まで登った。
しかし、天候の悪化を兆(きざ)し、五竜岳の登頂は
諦め早目にテンバまで戻った。

予想通り、その夜から山は荒れだした。
テントから這い出すことさえままならぬ猛吹雪。
容易には下山さえもできない状況に陥ってしまった。

閉じ込められること四日目。
そろそろ食料も底を尽き始めてきた朝。
ようやく風も止みはしたが、視界数メートルのなか撤収することにした。
しかも、その日が家族にも警察への届けも示した下山予定日だった。

ワッパ(かんじき)を履いていても胸までのラッセル。
交代で空身になり先頭に立ち新雪を掻き分けての下山。
日もとっぷり暮れたころ、閉鎖されている遠見小屋に辿り着く。
小屋の横にそそくさとウィンパーを張り、お互い喋る気力も失せたまま
シェラフ(寝袋)に潜り込んだ。

翌日は、こんな日は滅多にないというぐらいの快晴。
しかし、スキー場は不気味なほどの静けさだった。
我々はテレキャビンの終点駅まで下った。
そこで見たものは、誰もいない鍵のかかっていない
まるで夜逃げでもしたような事務所だった。
モク切れの連中は事務机の引き出しを片っ端から開け煙草を探す。
腹のへった者は、唯一食べ物と呼べるアイスクリームのボックスを
開け頬張る。

事の次第を悟った我々は、再び人っ子一人いない雪深い
ゲレンデをトボトボと降りていった。
振り向けば真っ青な空の下、キラキラ輝く新雪には
我々がつけたトレースだけがくっきりと残っていた‥‥。

このうちの二人が、今でも新年会で毎年顔を合わせる仲間である。
もちろん、酔いが回れば恒例の如くこのときの話が飛び出す。

# by don-viajero | 2008-02-24 19:49 | | Comments(2)