2009年 07月 12日
『プラトニックラブ』 こんな言葉、いまは死語になってしまったのだろうか? 最近、とんと耳にしなくなった。 小田急線上り電車に乗っていた。 乗降口に背をもたれ、文庫本を開いていた。 夕方ともなれば、各駅停車の電車はガラガラだ。 そんな空席の目立つときでも、あえて坐らなかった。 ある駅に停まったとき、二つ向こうの乗降口から 聞き覚えのある声がした。 高校時代付き合っていた彼女(ひと)だった。 女性二人、男性二人のグループ。 向こうでも私の存在に気付いた。 私はさっと読みかけのページに目を落とした。 文章の脈絡もなにもあったものではない。 文字だけを追っているだけで、 虚空を見上げているも同然だった。 疎らな人影をはるかに圧倒している鉛のような空気に、 車両全体が押しつぶされそうになり、 次の駅で逃げるように降りた。 高校は違ったのだが、同じ電車に乗り合わせれば、 降車した駅から自転車を押す彼女と彼女の家まで、 他愛のない話をしながら歩いた。 学校でのこと、友だちのこと、山のこと、進路のこと‥‥。 手も握ったこともなかった。 それでも週一回か二回、そうしたことに充実していた。 高三の冬、クリスマスプレゼント交換を最後に、別れた。 私にも、そんな『恋』をした時代があったことが、 すっかり褪せてしまったセピア色の記憶の中から、 ふっと甦った‥‥。
by don-viajero
| 2009-07-12 08:16
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