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陽気なイエスタデイ

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2009年 07月 18日

日本百名山

「海の日」があって「山の日」がないのは何故だろう?

それはさて置き、昨今、有名な山に登る人が
あまりにも多くなってしまっているらしい。

我々が山に夢中になっていたころは、
御嶽山のような山岳信仰の山は例外ではあるが、
今のような中高年はあまり見かけなかった。
最盛期の夏山は若者で賑わっていた。
滝谷みたいな岩場でさえ、ときおり順番待ちを食らった。

古来、日本では擬人法で山を表現してきた。
「山笑う」は春になれば、木々が“ウフフ”と芽吹く季語だ。
豊富な残雪の雪稜登攀での休息時、春の陽光を浴びて、
滴り落ちる水滴に口を差し出して、“チュッチュッ”と
むしゃぶりつく。我々はそれを「乳汁」と名付けていた。
充分喉の渇きを潤せば、自然に“ウフフ”と笑みが零れる。
秋は燃えるような赤や黄色に「山粧(よそお)う」。
そして、冬「山眠る」。
荒れ狂う天候には悩まされるが、誰もつけていない
自分たちだけのトレースに、ときおり振り向きながら、
静寂で、真っ白な世界を踏みしめてゆくのは、
如何ともしがたく、痛快だ。

今回、大量遭難を招いた大雪山系はアイヌ語で
「カムイミンタラ」と呼ばれ、その意味は「神々の遊ぶ庭」。
たとえ神々と共に楽しむ山行であれ、如何なる状況下においても、
山の神々の忠告に耳を澄ませて聞かねばならない。

周知の如く、深田久弥氏の「日本百名山」が、
今日(こんにち)の中高年登山に火をつけたのは明らかだ。
それにともない、お金と時間に余裕のある人々が、
全国中に散らばった百名山目指して登り始めた。
しかも、己の体力を省みずにだ。この本の後記に
「日本人ほど山を崇(たっと)び
 山に親しんだ国民は世界に類がない」とある。

尊ぶ心が荒(すさ)んできたのだろうか?
ゴミ捨てや高山植物の盗掘を嘆く声も多くなっている。

夏、山は「泣いている」らしい。

by don-viajero | 2009-07-18 21:50 | | Comments(0)


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