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陽気なイエスタデイ

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2010年 04月 01日

痒み・Ⅱ

戦前生まれならまだしも、我々の世代以降で、南京虫や
シラミにお目にかかった者は、そうはいないだろう。

若いころの旅で、この二種類の虫に好かれてしまった。
しかも、同時に同じ宿でだ。
しかし、シラミの場合は2、3日前、どこかで私の体に
移ってきたと思われるが‥‥。

アフガニスタンからパキスタンへ抜ける国境。
このカイバル峠を誰かが「まさに地球だ!」と言った。
ところが、そんなものではない!
急峻な何百mという高さから岩が覆い被さってくる。
頂上付近に張り付いた雪が、僅かに覗く紺碧の空に映え、
バスは地殻のなかを、怯えながら走っているという感じだった。
夕方遅く到着したペシャワールの宿はどこも空きがなく、
仕方なく、いかにも不潔そうではあったが二人部屋
(10パ・Rp≒300円)に決める。

夜中、どうも体中がムズ痒い。Tシャツを脱いでみたら、
何と、まるまる太ったシラミの大群!
ベッドのシーツには茶色く蠢く小さな虫たち!
シャツの縫い目にはシラミの卵がビッシリ!
シャツをビニール袋に収め、シーツ上の南京虫をつぶす!
全身に防虫クリームを塗り、防虫スプレーを振り掛ける。
ベッドには入らず、持参してきたシェラフに潜り込み、
朝まで熟睡することができた。

ラワルピンディで一泊後、向かったラホールの宿の支配人に、
シラミの一件を話すと、Tシャツを煮沸してくれ、
しかも、体中、オイルを塗り、無料でマッサージをしてくれた。
実は、この安宿、売春宿であり、マリファナ、大麻の巣窟では
あったのだが‥‥。

件(くだん)のお気に入りだったTシャツは、その後着ることもなく、
インド・アムリッツァの土産物屋で物々交換して放出した。
「VAN is famous maker in Japan and very expensive shirt !」
彼は喜び、私は安心した。

「シラミは貧乏人、ノミは金持ちにつく」そうだ‥‥。

by don-viajero | 2010-04-01 20:43 | エッセー | Comments(0)


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