2012年 09月 02日
「坂口安吾」が“聖なる無頼”(村上護著)ならば、おそらく 「中上健次」は“最後の無頼”を通した、本物の作家なのかも しれない。 被差別部落民として育った作家の言葉には、業の深さや過酷さを 余すところなく、ビシビシと響かせてくるものがある。 ひょっとしたら、“無頼”という称号が本来の作家の姿であり、 年金の仕組みすら知らない、軽薄などこかの元知事と一緒に なって、興味本位な三文判記事のコメンティターや、中途半端な 大名旅行の雑文をご大層に書き散らす当世の物書きに「作家」の 称号を与えたくなくなるような気さえしてくる。 ちょうど「高橋和巳」を数冊読み終えたころだった。二十歳代 後半から三十歳代前半にかけて、氏の小説を次々と読んだ。 短編の「19歳の地図」「蛇淫」「化粧」「水の女」、長編「枯木灘」、 随筆「鳥のように獣のように」etc‥‥。心を揺さぶるものが あったことだけは確かだ。だからこそ、一冊で終わらず、次々と 手にしたのだった。 中上健次の本は正直難しい。というよりも、当時の私に氏の小説を 噛み砕く読解力が足りなかったことも事実である。40歳を過ぎた あたりから少しずつ読み返している‥‥。そして新しい発見がある。 人はそれぞれに好き嫌いがあるし、また耳にする音楽のフィーリングが 合う、合わないがあるかもしれないが、試しに一冊読んでみてもいいの ではないだろうか?もしかしたら“最後の無頼”の意味することが 理解されるかもしれない‥‥。 中上健次の本の1ページを捲ってから数十年の星霜が過ぎ去った‥‥。 久しぶりに氏に関する新たな本を手にする機会に恵まれた。 「エレクトラ」高山文彦著。中上健次の評伝だ。それは彼の自宅の 火災で焼失してしまった作品のタイトルでもあったらしい。
by don-viajero
| 2012-09-02 19:08
| 本
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
全体 エッセー 山 本 超短編小説 「アドルフお坊ちゃん」 夢 Run Photo ずくの会(米作り) 男の料理 ◆旅/全般◆ Sri Lanka Myanmar Cuba/Mexico Portugal Thai/Laos/Cambodia Vietnam Yemen Mexico Bulgaria/Swiss Guatemala/Honduras Uzbekistan Peru/Bolivia Maroc 未分類 以前の記事
2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 more... 最新のコメント
記事ランキング
画像一覧
|
ファン申請 |
||