陽気なイエスタデイ

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2018年 04月 04日 ( 1 )


2018年 04月 04日

廃れる

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【我が家の満開の白梅】

犀川に沿った国道19号線を長野市に向けて走っていた‥‥。
山清路以降の道のりは、20年以上前まで遡るだろうか‥‥。

しばらくして、右手の小さな山間(やまあい)の集落が
目に飛び込んできた。躊躇せずシャッターの下りた小さな
雑貨屋の前に車を停めた。

左手のバス停に一人で座っていた、白髪交じりのおばさんに
声をかけた。
「すみません。この集落の方ですか?」
「そうだよ!」
「ここに昔○○だったMさんは、ご健在でしょうか?」
「あぁ‥。T君のことだね!
 あの子はアル中になっちまって、それがもとで
 10年以上前に死んじまったよ!」
「そうでしたか‥‥。ありがとうございました」

時は30年以上過ぎ去っていたが、私より2つ年上だった
彼の家は知っていた‥‥。両脇の朽ちかけた数軒の空き家を
見過ごし、急な上り坂を歩いて10分ほど喘ぎながら辿り着いた。

庭は長い時間手入れもされず、春先のまだ背の伸びていない
雑草が生い茂り、玄関の表札に示された彼の名も家族の名も
すっかり錆びついていた‥‥。

車を停めた場所へは違う小道を下って行った。そこで見つけた
小さな墓所。なかでもまだ真新しい梵字のお墓が目に留まった。

墓碑には彼の名も、やはり私を殊の外可愛がってくれた彼の
父親の名も刻まれていた。静かに首(こうべ)を垂れ両手を
合わせる‥‥。

車窓から流れる川沿いの満開のソメイヨシノと、点在する
山々に咲き乱れる山桜の競演が、春霞のせいなのか滲み
出てくる涙の被膜なのか、いくらかぼやけて見えていた‥‥。 

by don-viajero | 2018-04-04 19:29 | 超短編小説 | Comments(0)