2012年 02月 17日
一年も経てば、再び無用と思えるものが、数限りなく 引き出しに収まっているし、新たに不要と判別 できるような衣類も出てくる‥‥。 周りの音を消し去るような、静かに降りしきる雪ではなく、 風が針葉樹の木々を揺らす音と、場違いな雨の湿った音が 混ざり合っていた、そんな冬のある日のことだ。 突然、読みかけの本を放り出して、ダンジャリアンと化し、 モノを捨てる作業に夢中になった。 一昨年の暮れ、思い止まって捨てきれずに仕舞い込んで 置いたモノも、そのモノにまつわる者たちへの郷愁も 一緒に捨て去ろうとしている。今回は捨てるか残すか 迷ったときは、必ず捨てる方を選んだ。古びた記憶のなかに 押し込められていたモノたちが、指先を離れてゆく瞬間の、 きっぱりとした感触がやけに心地よかった‥‥。 ついでに、開きっぱなしのライティングビューローの机に 乱雑に置かれたDMや書類、死にかけた虫が這いずり 回ったような、判読不可能な文字で記されたメモ用紙。 次に、ビューローの上にある作り付けの本棚の整理。 この棚は、主に旅関係の本を納めてある。 そのなかに隠れるようにして残っている、背表紙がボロボロに なってしまった古い教科書を手にとった。 『詳密高等地図』。高校時代の世界地図だ。 日本各地はおろか、世界のいたる地点に印と記述がある。 ちょくちょく授業を脱線して熱く語るF教諭。はたして師が、 その場所を訪れたことがあったのか定かではないが、確かに あの時、あの教室で目を耀かせて聞き入っていた私がいた。 記憶のなかから想い出が、わぁ~っと溢れてくる一冊だ。 国名が変わってしまったものがあっても、これはいまでも 私の宝であり、原点なのかもしれない‥‥。 #
by don-viajero
| 2012-02-17 20:17
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