陽気なイエスタデイ

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2007年 06月 24日

私には、今年86の齢を迎えた父がいる。
母は誕生日を迎えて79歳になる。
どちらも息災である。

そんな父は傘寿を過ぎた辺りから、
自分の生まれ育った所へ、毎年行きたがるようになり、
その度に母と姉がお供で出かけた。

ところが、今年は違った。
どうしても一人で行くと言って、
手提げバッグに一枚の年賀状を忍ばせて、
突然、上京してしまった。

無事、帰ってきてから、どうしても話したいことがあるから、
出かけて来いという電話があった。

若い頃、憧れの君がいたそうだ。
小柄で、とってもチャーミングな人。完全な片思い。
その方は、父の知り合いと結婚したが、早くに連れ合いを亡くされ、
今は娘さん夫婦と同居されていて健在。
年賀状のやりとりだけで数十年が経ち、
どうしても、死ぬ前に逢っておきたかったらしい。
賀状の住所だけを頼りに、期待を漲らせ、
連絡もなしで訪問したのだ。

開口一番、父から発せられた言葉は
「ガッカリした。ショックだった。」
「どうして・・・?」
「あの人はすっかり老け込んで、おばあちゃんになっていた。」
-当たり前だ!-
それでも、僅かながら昔の面影は残っていたらしい。
突然の訪問にも拘わらず、過分な接待を受け、
蝶々喃々と時を過ごしたことだろう。
その一点だけが残念ではあったが、
満足して帰ってきたのだ。

父の長い人生の中で、須臾の間の出来事ではあったが、
これで一つ、区切りが付いたことになる。

# by don-viajero | 2007-06-24 16:20 | エッセー | Comments(4)